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GHS対応モデルラベル作成法
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(A)GHS勧告に基づき混合物としてのGHS区分を分類してラベルを作成する方法

◆ 油性系塗料をモデルとした混合物のGHS分類例 ◆ -no.2-

3 油性系塗料モデル配合物のGHS分類例

分類各論

I .物理化学的危険性

引火性液体;区分1(引火点;19.5℃<23℃、沸点データはないが、組成中に低沸点の成分(ミネラルスピリット)を含むので、初留点を35℃以下と推定する。)

  1. シンボル;炎
  2. 注意喚起語; 危険
  3. 危険有害情報; 極めて引火性の高い液体及び蒸気

II .健康有害性

1.急性毒性

ここでは、各成分のデータから混合物の急性毒性を計算により算出した。

含有量(%) 急性毒性(経口) 急性毒性(経皮) 急性毒性(吸入:ガス) 急性毒性(吸入:蒸気) 急性毒性(吸入:粉じん,ミスト)
1 クロム酸鉛 14.4 分類できない 分類できない 分類対象外 分類対象外 分類できない
2 硫酸鉛 2.2 区分外 分類できない 分類対象外 分類対象外 分類できない
3 キシレン 7.5 区分5
(3500mg/kg)
分類できない 分類対象外 区分外 分類できない
4 エチルベンゼン 6.1 区分5
(3500mg/kg)
区分外 分類対象外 区分3
(4mg/L)
分類できない
5 イソブタノール 4.8 区分5
(2596mg/kg)
区分5
(2523mg/kg)
分類対象外 区分外 分類できない
6 ミネラルスピリット 3 区分外
(28300mg/kg)
区分外 分類対象外 区分3
(5.5mg/L)
分類できない
7 メチルエチルケトン 4 区分5
(2483mg/kg)
区分外 分類対象外 区分5 分類できない
8 二酸化チタン 8 区分外
(>12000mg/kg
分類できない 分類対象外 分類対象外 分類できない
9 アルキド樹脂 12 区分外 分類できない 分類対象外 分類対象外 分類できない
10 メラミン樹脂 23 区分外 分類できない 分類対象外 分類対象外 分類できない
11 添加剤 15.0 分類できない 分類できない 分類できない 分類できない 分類できない
  合計 100          
1-1.急性毒性(経口)

添加剤、クロム酸鉛は毒性未知成分である。不明が10%をこえる(15.0%)ので次の加算式(a)を使う。樹脂等は無毒性とも考えられるが、次の3段階に分けて急性毒性を試算した。このうち最も安全サイドの数値を採用した。

・・・・・・・・(a)

  1. Case 1.
    添加剤、クロム酸鉛を毒性未知成分とする。硫酸鉛、二酸化チタン、樹脂成分のATEを∞(無害)と仮定する。
  2. 添加剤、クロム酸鉛  硫酸鉛 キシレン エチルベンゼン イソブタノール
    (100-15.0-14.4)/ATEmix = (2.2/∞) + (7.5/3500) + (6.1/3500) + (4.8/2596)
      ミネラルスピリット メチルエチルケトン 二酸化チタン  
      + (3/28300) + (4/2483) + (8/∞)  
      アルキド樹脂 メラミン樹脂    
      + (12/∞) + (23/∞)    
      = 0.0075      
    ATEmix = 9400mg/kg,  GHS区分外    
  3. Case 2.
    添加剤、クロム酸鉛、樹脂成分を毒性未知成分とする。硫酸鉛、二酸化チタンのATEを∞(無害)と仮定する。
  4. 添加剤、クロム酸鉛、樹脂成分  硫酸鉛 キシレン エチルベンゼン イソブタノール
    (100-15.0-14.4-12-23)/ATEmix = (2.2/∞) + (7.5/3500) + (6.1/3500) + (4.8/2596)
      ミネラルスピリット メチルエチルケトン  二酸化チタン  
      + (3/28300) + (4/2483) + (8/∞)  
      = 0.0075      
    ATEmix = 4700mg/kg → 区分5    
  5. Case 3.
    添加剤、クロム酸鉛を毒性未知成分とする。硫酸鉛、二酸化チタン、樹脂成分のATEを5000mg/kgと仮定する。(本テキストでは安全サイドを考慮しCase 3を採用してラベルを作成)
  6. 添加剤、クロム酸鉛、樹脂成分  硫酸鉛 キシレン エチルベンゼン イソブタノール
    (100-15.0-14.4-12-23)/ATEmix = (2.2/∞) + (7.5/3500) + (6.1/3500) + (4.8/2596)
      ミネラルスピリット メチルエチルケトン  二酸化チタン  
      + (3/28300) + (4/2483) + (8/∞)  
      = 0.0075      
    ATEmix = 4700mg/kg → 区分5    
  7. シンボル;なし 
    注意喚起語;警告
    危険有害情報;飲み込むと有害のおそれ
1-2.急性毒性(経皮)

添加剤、硫酸鉛、クロム酸鉛、キシレンは毒性未知成分である。不明が10%をこえるので加算式(a)を使う。その他の不明成分はATEを5000mg/kgと仮定して計算した。

添加剤 クロム酸鉛 硫酸鉛 キシレン  エチルベンゼン イソブタノール ミネラルスピリット
(100-15.0-2.2-14.4-7.5)/ATEmix = (6.1/5000) + (4.8/2523) + (3/5000)
  メチルエチルケトン 二酸化チタン  
  + (4/5000) + (8/5000)  
  樹脂成分    
  + (12/5000) + (23/5000)  
  = 0.013    
ATEmix = 4700mg/kg →混合物の急性毒性(経皮)区分5

シンボル;なし
注意喚起語;警告
危険有害情報;皮膚に接触すると有害のおそれ

1-3.急性毒性(吸入:ガス)

ガス成分がないので急性毒性(吸入:ガス)区分対象外とした。

1-4.急性毒性(吸入:蒸気)

 急性毒性(吸入:蒸気)については揮発性成分のみを対象として試算した例を示す。加算式(a)を使用すると、毒性成分既知の部分についてのATEが算出されることとなる(混合物の評価にあたり未知成分も既知成分と同様の毒性をもっていると仮定することとなる)。そこで、揮発性成分で蒸気の吸入によるATE値が既知ものを「毒性既知成分」とし、その他(揮発性が不明の添加剤、非揮発性成分)を「毒性未知成分」としてこの式を適用すると、揮発性成分についての蒸気吸入の場合のATE推定値が算出される。揮発性成分(溶剤)をすべて蒸発させた気相についての仮想的な計算をしていることとなる。

 なお、区分が判明していて具体的な毒性が示されてないものについては、実験的に得られた急性毒性範囲推定値(または急性毒性区分)から各ばく露経路に関する分類のための急性毒性推定値(ATE)への変換、によりその毒性値を求めた。

・・・・・・・・(a)

クロム酸鉛 硫酸鉛 二酸化チタン 樹脂成分 添加剤  キシレン エチルベンゼン  イソブタノール
(100 -(14.4+2.2+8+12+23+15.0))/ATEmix = (7.5/5000) + (6.1/700) + (4.8/5000)
  ミネラルスピリット  メチルエチルケトン
  + (3/700) + (4/3000)  
25.4/ATEmix = 0.017    
ATEmix = 1500ppm →混合物の急性毒性(吸入:蒸気)
 区分3 (揮発性成分についてのみ計算)
シンボル;
注意喚起語;危険
危険有害情報;吸入すると有毒

注:混合物の各成分のLC50が飽和蒸気圧濃度の90%より低い濃度の場合、ppmを用いて混合物の急性毒性(吸入)を計算した。

 

1-5.急性毒性(吸入:粉じん、ミスト)

大半の成分が分類できないか、分類対象外なので、混合物の急性毒性(吸入:粉じん、ミスト)は分類できないとした。