四塩化炭素の吸入によるがん原性試験結果の概要
1. 目的
四塩化炭素のがん原性を検索する目的で、ラットおよびマウスを用いた吸入投与(全身ばく露)による長期試験を実施した。
2. 方法
○使用動物
試験には、F344/DuCrj(Fischer)ラット(6週齢)およびCrj:BDF1マウス(6週齢)を用い、それぞれ雌雄各群50匹、4群の構成とし、合わせてラット400匹、マウス400匹を使用した。
○投与方法
四塩化炭素の濃度をラットとマウスの雌雄とも125、25、5、0ppm(対照群)とし、1日6時間、週5日、投与した。投与濃度は13週間の予備試験結果に基づいて決定した。投与期間は104週間(2年間)とした。
○観察、検査項目
一般状態の観察、体重と摂餌量の測定、尿検査、血液学的検査、血液生化学的検査、剖検、臓器重量測定、病理組織学的検査を実施した。
3. 結果
○ラット
・生存数等
生存数は、雌雄とも125ppm群で対照群と比較して著しい低値を示した。体重は、雌雄とも125ppm、25ppm群で対照群と比較して低値を示した。
・腫瘍性病変(表1)
雌雄とも肝細胞癌、肝細胞腺腫の発生増加が認められた。
表1 腫瘍の発生数(ラット)
濃度 | 対照群 | 5ppm群 | 25ppm群 | 125ppm群 |
|
雄(検査動物数) | (50) | (50) | (50) | (50) |
肝臓 肝細胞癌 |
1 |
0 |
0 |
32 |
肝細胞腺腫 |
0 |
1 |
1 |
21 |
|
雌(検査動物数) | (50) | (50) | (50) | (50) |
肝臓 肝細胞癌 |
0 |
0 |
3 |
15 |
肝細胞腺腫 |
0 |
0 |
0 |
40 |
○ マウス
・生存数等
生存数は、雄の125ppm群で対照群と比較して著しい低値を示した。雌では125ppm群および25ppm群で対照群と比較して著しい低値を示した。体重は、雌雄ともに125ppm、25ppm群で対照群と比較して低値を示した。
・腫瘍性病変(表2)
雌雄とも、肝細胞癌、肝細胞腺腫および副腎の褐色細胞腫の発生増加が認められた。
表2 腫瘍の発生数(マウス)
濃度 | 対照群 | 5ppm群 | 25ppm群 | 125ppm群 |
|
雄(検査動物数) | (50) | (50) | (50) | (50) |
肝臓 肝細胞癌 |
17 |
12 |
42 |
48 |
肝細胞腺腫 |
9 |
9 |
27 |
16 |
副腎 褐色細胞腫 |
0 |
0 |
16 |
31 |
|
雌(検査動物数) | (50) |
(49) |
(50) |
(49) |
肝臓 肝細胞癌 |
2 |
1 |
33 |
48 |
肝細胞腺腫 |
2 |
8 |
17 |
5 |
副腎 褐色細胞腫 |
0 |
0 |
0 |
22 |
4. まとめ
2年間にわたる四塩化炭素の吸入投与(全身ばく露)によるがん原性試験の結果、ラットでは雌雄に肝細胞癌、肝細胞腺腫の発生増加が認められ、四塩化炭素のF344/DuCrj(Fischer)ラットの雌雄に対するがん原性が示された。またマウスでは雌雄に肝細胞癌、肝細胞腺腫、副腎の褐色細胞腫の発生増加が認められ、四塩化炭素のCrj:BDF1マウスの雌雄に対するがん原性が示された。