転倒防止に有効な安全靴
転倒の主な原因のうち、「滑り」と「踏み外し」は、靴底の滑りにくさを上げることで転倒リスクを下げることができます。また、高齢者だけでなく、若年者でも疲労が蓄積すると歩行時に足が上がらず、摺り足に近い歩行形態になって靴の先端部を凹凸に引っかけ、10センチ程度の段差でも、つまずきやすくなります。
「つまずき」は、靴底の構造によって、ある程度の効果を出すことができます。
転倒に有効な安全靴に求められる性能を整理すると、次の5点になります。
滑りにくいことが、かえってつまずきの原因になる場合があるなど、作業現場によって有効な安全靴は異なりますので、メーカーや販売店とよく相談しましょう。
1 靴の屈曲性
靴の屈曲性が悪いと、足に負担がかかるだけでなく、擦り足になり易く、つまずきの原因となります。
2 靴の重量
靴が重くなると、足が上がりにくくなるため、擦り足になり易く、つまずきの原因となります。靴が重く感じられる重量には個人差がありますが、短靴では900g/足以下のものをお勧めします。
3 靴の重量バランス
靴の重量がつま先部に偏っていると、歩行時につま先部が上がりにくく(トゥダウン)、無意識のうちに擦り足になりやすく、つまずきを生じ易くなります。
4 つま先部の高さ
つま先部の高さ(トゥスプリング)が低いと、ちょっとした段差につまずき易くなります。高年齢労働者ほど擦り足で歩行する傾向があるため、よりつまずき易くなります。
5 靴底と床の耐滑性のバランス
滑り易い床には滑りにくい靴底が有効ですが、滑りにくい床に滑りにくい靴底では、摩擦が強くなりすぎて歩行時につまずく場合があります。靴底の耐滑性は、職場の床の滑り易さの程度に応じたものとする必要があります。
安全靴の規格は、日本工業規格(JIS)と公益社団法人日本保安用品協会が定めたJSAA規格の2つがあり、日本工業規格では、JIS T 8101(安全靴)において、「耐滑性が優れる靴」とは、動摩擦係数が0.2以上の物と規定されています。耐滑性能に優れた靴底を持つJIS規格安全靴には「F」(friction=摩擦 の頭文字)の記述が入っており、JSAA規格プロテクティブスニーカーには、ベロ裏に耐滑性を示すピクトが入っております。
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動摩擦係数 |
耐滑性が優れる靴 |
0.2以上 |
一般のプロテクティブスニーカー |
0.05〜0.15程度 |
市販の紳士靴 |
0.01〜0.1程度 |
なお、安全靴の耐滑性能には寿命があり、靴底の摩耗が進み、靴底の凹凸が完全に磨滅してしまうと、耐滑性が急激に低下しますので、靴底の凹凸が残っているうちに交換することをお勧めします。
参考リンク