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労働災害事例

住宅のエレベーターの点検中に搬器が落下

住宅のエレベーターの点検中に搬器が落下
業種 その他の事業
事業場規模 5~15人
機械設備・有害物質の種類(起因物) エレベータ、リフト
災害の種類(事故の型) 激突
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100463

発生状況

 この災害は、一般住宅のエレベーターの定期点検中に発生したものである。
 エレベーターの保守点検を専門とする会社に所属している作業者Aは、災害発生当日は一人で3階建て個人住宅のエレベーター(積載荷重200kg,32m/min,ロープ駆動式,搬器質量250kg)の定期点検に訪問し、住宅の持主と作業時間の打合せなどを行った。
 このとき、持主からエレベーターに「きしみ」音が出るので点検してほしいと要望があったが、Aが今日は定期点検の準備しかしていないので「きしみ」音については後日作業者2人で整備すると返答したところ、持主は納得してそのまま外出し、Aは直ぐに点検作業に取りかかった。
 1時間ほどして持主が帰宅したところ、搬器が下方まで降りていて、Aがエレベーターピットの中でモーターのほうに顔を向け下を向いた状態でかがんでいたので、点検を行っているのだと思い再び外出した。
 それから2時間ほどして帰宅した持主がエレベーターを見て、前と同じ状態であったので不審に思い近づいてみると、Aがエレベーターの搬器の下敷きになっていたので、直ちに救急車の出動を要請し、レスキュー隊が被災者を救出したがほとんど即死の状態であった。
 なお、被災時には、エレベーターピット内のモーターは変速機部分から取り外された状態であった。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  モーターを変速機部分から取り外したこと
 被災者が行っていた作業は本来当日に行う予定にはなかったものであるが、被災者が以前に上司とともに同じエレベーターについて点検と「きしみ」の改善を行っていたためか、「きしみ」改善のためにモーターを取り外しモーター軸と変速機のギア軸を連結するキーの具合を点検しようとしてモーターを取り外したため、変速機から外れた搬器が急激に下降して背中に載ったため圧迫されたものである。
2  搬器の下降を防止する機構が作動しなかったこと
 このエレベーターには、モーターのオーバースピード(32m/min)を検出しモーターを停止する機構とロープが切断した場合に非常止めローラーが作動してレールに噛む機構が備え付けてあったが、前者についてはモーターを取り外したため作動せず、後者についてはロープが切断していないので作動しなかったものである。
3  作業手順書に従わずに作業を行ったこと
 会社の策定した作業手順書には、モーターの異音(きしみ)解消の作業は必ず2名で行い、搬器ストッパーをレールに掛けることになっていたが、被災者はこの手順書どおりの作業を行っていなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1  作業手順を周知徹底すること
 エレベーターの保守点検、整備作業においては、安全な作業のための手順を定め、策定した手順を確実に履行するように関係作業者に周知徹底する必要がある。
 なお、エレベーターについては、搬器を上げた状態で作業を行う場合にはその確実な落下防止措置を徹底することが必要である。
2  機械設備の本質的改善を行うこと
異常な状態の発生が多い機械設備については、応急的に措置することと併せてそのような事象が発現しないようにその原因を究明し、機械設備の本質的安全化を図ることが重要である。
3  安全管理体制を整備すること
機械設備の保守点検・整備の作業を行う者は、直行直帰による作業を行うこと等も少なくないが、安全を含めた作業指示を明確に伝達することはもちろんのこと、策定した作業手順が現場で履行されているか否かをパトロール等により把握して必要な指示、安全教育などを行う安全管理体制を整備し、効果的な安全管理を行うことが重要である。
 なお、指示の範囲外の作業が必要になった場合の連絡方法などについても徹底しておくことが重要である。