安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
安全管理者又は安全衛生推進者等の選任が義務づけられていない、常時10人以上の労働者を使用する小売業や社会福祉施設、飲食店等の事業場に配置され、安全管理を行う者を「安全推進者」といいます。安全推進者の対象事業場、要件等は、厚生労働省における「安全推進者の配置等に係るガイドライン」に示されています(後述)。
労働安全衛生法施行令第2条第3号に掲げる業種(以下「3号業種」という)の事業場には、安全管理者や安全衛生推進者の選任、安全委員会の設置といった義務付けがなく、安全管理体制の構築に対して法令的に担保されていない現状にあります。
一方、1年間に発生する休業4日以上の労働災害約12万件のうち、約5万件が3号業種において発生しており、これらの業種における安全管理体制の構築が急務となっており、厚生労働省が策定した「第12次労働災害防止計画」においても、3号業種のほとんどを占める第三次産業、とりわけ小売業、社会福祉施設、飲食店に対して重点業種として掲げて数値目標を設定しています。
こうしたことを踏まえ、社会福祉施設やその他の小売業等の3号業種に対して、安全推進者を配置し、安全管理体制の充実を図ることなどを目的として「安全推進者の配置等に係るガイドライン」が策定され、当該業種の事業場における労働災害防止が推進されています。
1号 | 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業 |
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2号 | 製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 |
3号 | その他の業種 |
3号業種の事業場では、「安全推進者の配置等に係るガイドライン」に沿って、安全推進者を配置し、職場環境の改善や安全意識の啓発等の実施が求められています。
3号業種の事業場であって、常時10人以上の労働者を使用するものを対象としています。
なお、第12次労働災害防止計画において、労働災害削減の数値目標を掲げた重点業種である以下の業種の事業場については、特に重点的にガイドラインに基づく安全推進者の配置に取り組むものとされています。
なお、「労働安全衛生法施行令第2条第3号の業種」とは、第1号及び第2号の業種を除く全ての業種(常時10人以上の労働者を使用するもの)となります。
安全推進者は、職場内の整理整頓(4S活動)、交通事故防止等、業種の別に関わりなく、事業所内で一般的に取り組まれている安全活動に従事した経験を有する者のうちから選任するものとしています。
なお、常時使用する労働者が50人を超える事業場や、労働災害を繰り返し発生させた事業場については、安全に対する知見を少しでも多く有する者を配置する観点から、以下の者を配置することが望ましいとされています。
原則として、事業場ごとに1名以上配置するものとしています。ただし、安全推進者の職務を遂行しうる範囲内において、一定区域内の複数の事業場で1名の安全推進者を配置することとしても差し支えないものとされています。
事業者は、安全推進者を配置したときは、その氏名を作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知するものとしています。
本ガイドライン対象事業場でみられる災害の多くは、転倒災害、荷物の運搬による腰痛、階段からの墜落・転落や交通労働災害など、日常生活でも起こりうるものであり、その防止のためには「職場環境や作業方法の改善」や「安全衛生教育の実施」などの必要性を、事業者と労働者がともに強く認識する必要があります。
そのため安全推進者は、事業の実施を総括管理する者を補佐して、以下の職務を行うものと定められています。
また、事業者は、こうした安全推進者の活動を実効あるものとするため、安全推進者に対して必要な権限を与え、知識の付与や能力向上に配意する必要があります。