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安全衛生キーワード(用語集)

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暑さ指数(WBGT値)

1 暑さ指数(WBGT値)とは

暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature、湿球黒球温度)は、熱中症を予防することを目的として、1954年にアメリカで提案された指標で、世界中で広く活用されています。単位は気温と同じ摂氏(℃)ですが、その値は気温とは異なります。熱中症の発症に関与するとされている、気温、湿度、日射、気流の4要素を総合的に評価することができるため、人が受ける暑熱環境による熱ストレスを評価し、熱中症を予防するための指標として活用が推進されています。

2 WBGT値の測定と熱中症発生リスクの評価

WBGT値については、作業場所にWBGT 指数計を設置する等により、実測することが望まれます。使用するWBGT指数計は、JIS Z8504またはJIS B7922に適合したものを用いることが求められます。

WBGT値は、自然湿球温度、黒球温度、気温(乾球温度)から求められます。

※自然湿球温度、黒球温度、気温(乾球温度)とは以下のとおりです。
自然湿球温度 強制通風することなく、輻射(放射)熱を防ぐための球部の囲いをしない環境に置かれた濡れガーゼで覆った温度計が示す値
黒球温度 次の特性を持つ中空黒球の中心に位置する温度計が示す値
(1)直径が150mmであること(2)平均放射率が0.95(つや消し黒色球)であること(3)厚さが出来るだけ薄いこと
気温(乾球温度) 周囲の通風を妨げない状態で、輻射(放射)熱による影響を受けないように球部を囲って測定された乾球温度計が示す値

■日射がない場合

  • WBGT値 = 0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度                  (1)

■日射がある場合

  • WBGT値 = 0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×気温(乾球温度)   (2)

職場における熱中症の予防には、令和3年4月20日付け基発0420第3号「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定について」などに示されている予防対策を徹底して下さい。

作業服として長袖シャツとズボンといった通常の作業服等ではなく、表1に記載されたような特殊な作業衣類を着用して作業を行う場合は、式(1)又は(2)により算出されたWBGT値に、それぞれ表1に掲げる衣類の組み合わせに対応したWBGT補正値を加える必要があります。このようにして求められたWBGT値にもとづいて、厚生労働省は、身体作業強度別、暑熱順化の有無により、表2「身体作業強度等に応じたWBGT基準値」のWBGT値による暑熱許容基準値を提示しています。表2「身体作業強度等に応じたWBGT基準値」に示したWBGT基準値は、健康な労働(作業)者を基準に、それ以下の暑熱環境にばく露されてもほとんどの者が熱中症を発症する危険のないレベルに相当するものとして設定されています。

表1 身体作業強度等に応じたWBGT基準値
区分 身体作業強度(代謝率レベル)の例 WBGT基準値
暑熱順化者のWBGT基準値℃ 暑熱非順化者のWBGT基準値℃
0 安静 安静、楽な座位 33 32
1 低代謝率 軽い手作業(書く、タイピング、描く、縫う、簿記);手及び腕の作業(小さいペンチツール、点検、組立て又は軽い材料の区分け);腕及び脚の作業(通常の状態での乗り物の運転、フットスイッチ及びペダルの操作)。 立位でドリル作業(小さい部品);フライス盤(小さい部品) ;コイル巻き;小さい電機子巻き;小さい力で駆動する機械;2.5 km/h以下での平たん(坦)な場所での歩き。 30 29
2 中程度代謝率 継続的な手及び腕の作業[くぎ(釘)打ち、盛土];腕及び脚の作業(トラックのオフロード運転、トラクター及び建設車両);腕と胴体の作業(空気圧ハンマーでの作業、トラクター組立て、しっくい塗り、中くらいの重さの材料を断続的に持つ作業、草むしり、除草、果物及び野菜の収穫);軽量な荷車及び手押し車を押したり引いたりする;2.5 km/h〜5.5 km/hでの平たんな場所での歩き;鍛造 28 26
3 高代謝率 強度の腕及び胴体の作業;重量物の運搬;ショベル作業 ;ハンマー作業;のこぎり作業;硬い木へのかんな掛け又はのみ作業;草刈り;掘る;5.5km/h〜7km/hでの平たんな場所での歩き。重量物の荷車及び手押し車を押したり引いたりする;鋳物を削る;コンクリートブロックを積む。 26 23
4 極高代謝率 最大速度の速さでのとても激しい活動;おの(斧)を振るう;激しくシャベルを使ったり掘ったりする;階段を昇る;平たんな場所で走る;7km/h以上で平たんな場所を歩く。 25 20
注1 日本産業規格 JIS Z 8504(熱環境の人間工学−WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価−暑熱環境)附属書 A「WBGT 熱ストレス指数の基準値」を基に、同表に示す代謝率レベルを具体的な例に置き換えて作成したもの。
注2 暑熱順化者とは、「評価期間の少なくとも1週間以前から同様の全労働期間、高温作業条件(又は類似若しくはそれ以上の極端な条件)にばく露された人」をいう。
表2 衣類の組合せによりWBGT値に加えるべき補正値(℃-WBGT)
組合せ コメント WBGT値に加えるべき着衣補正値 (℃-WBGT)
作業服 織物製作業服で、基準となる組合せ着衣である。
つなぎ服 表面加工された綿を含む織物製
単層のポリオレフィン不織布製つなぎ服 ポリエチレンから特殊な方法で製造される布地
単層のSMS不織布製のつなぎ服 SMSはポリプロピレンから不織布を製造する汎用的な手法である。
織物の衣服を二重に着用した場合 通常、作業服の上につなぎ服を着た状態。
つなぎ服の上に長袖ロング丈の不透湿性エプロンを着用した場合 巻付型エプロンの形状は化学薬剤の 漏れから身体の前面及び側面を保護 するように設計されている。
フードなしの単層の不透湿つなぎ服 実際の効果は環境湿度に影響され、多くの場合、影響はもっと小さくなる。 10
フードつき単層の不透湿つなぎ服 実際の効果は環境湿度に影響され、多くの場合、影響はもっと小さくなる。 11
服の上に着たフードなし不透湿性のつなぎ服 12
フード 着衣組合せの種類やフードの素材を問わず、フード付きの着衣を着用する場合。フードなしの組合せ着衣の着衣 補正値に加算される。 +1
注記1 透湿抵抗が高い衣服では、相対湿度に依存する。着衣補正値は起こりうる最も高い値を示す。
注記2 SMS はスパンボンド-メルトブローン-スパンボンドの3層構造からなる不織布である。
注記3 ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ならびにその共重合体などの総称である。

(熱中症予防対策の例)

  • 作業場所に日よけ、冷房及び大型扇風機などを設置するなどしてWGBT値の低減を図る。
  • 自覚症状の有無に関わらず水分・塩分の作業前後や作業中の定期的な摂取を徹底する。
  • 冷房などを備えた休憩場所、作業場所の近くに氷やシャワーなど身体を適度に冷やすことのできる設備を設ける。
  • 作業の状況などに応じて、休憩時間の確保、連続作業時間の短縮や作業場所の変更を行う。
  • 身体作業強度が高い作業を避ける。
  • 熱への順化の有無が熱中症の発生リスクに大きく影響することから、計画的に熱への順化期間を設ける。(※ 熱順化:暑さに慣れること)
  • 透明性及び通気性の良い服装等を着用する。
  • 作業を行う際には、熱中症の発症に影響するおそれのある睡眠不足、風邪や下痢などの体調不良、前日の多量飲酒、朝食欠食などに十分留意する。
  • 糖尿病、高血圧、心臓病、肥満など、特に熱中症を発症しやすい疾患のある人に対しては、産業医や主治医の意見を基に就業上の配慮をする

3 関連資料(通達、参考HP等)