安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
職場復帰支援
1 職場復帰支援とは
職場復帰支援とは、傷病等により長期休業していた労働者の復職のための支援を、会社側が行う支援活動です。
そのなかでも、特にメンタル不調(注1)からの職場復帰支援が推進されてきました。現状をみますと、メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業又は退職した労働者がいる事業所の割合は、13.3%となっています(注2)。こうした結果から、従業員の円滑な職場復帰・再適応を支援することは、企業経営にとって、貴重な労働力の維持・活用を計るという観点からも極めて重要な課題といえます。
しかしながら、現状では労働者の復帰支援に苦慮している企業が少なくありません。その要因としては、病気自体の難治性や再発率の高さも起因していますが、復帰に向けた仕組み作りが整備されていなかったり、復職させたが適応できず短期間で再休職となってしまったりする場合など、支援体制の不備や不調者への対応の難しさが指摘されています。特に、労働者の回復状態は休む前の元気な状態で戻るとは限らず、職場がこの判断を誤った場合は、本人のみならず、周りの同僚たちにも影響し、結果的に職場全体の生産性が低下してしまうことも懸念されています。
(注1) メンタルヘルス不調とは、精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう(厚生労働省 労働者の心の健康の保持増進のための指針 平成18年3月31日 9定義 ⑧ より)。
(注2) 令和4年労働安全衛生調査(実態調査)より。
2 職場復帰支援の流れ
厚生労働省は、平成16年からメンタルヘルス不調により休業した労働者に対する職場復帰を促進するため、事業場向けマニュアルとして、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公表しており、当該手引きでは実際の職場復帰にあたり、事業者が行う職場復帰支援の内容を総合的に示しています。手引きでは職場復帰支援の流れを以下の通り示しており、各事業所では、職場復帰プログラム関連規定の整備等により、休業から復職までの流れをあらかじめ明確にしておきます。また、職場復帰支援プログラムに基づき、支援対象となる個々の労働者ごとに具体的な職場復帰支援プログラムを作成します。その上で、労働者のプライバシーに十分配慮しながら、事業場内の産業保健スタッフ等を中心に、労働者、管理監督者が互いに十分な理解と協力を行うとともに、主治医との連携を図りつつ取り組みます。
- 【第1ステップ】病気休業の開始及び休業中のケア
- 労働者から管理監督者に、主治医による診断書(病気休業診断書)が提出され、休業が始まります。管理監督者は、人事労務管理スタッフ等に診断書(病気休業診断書)が提出されたことを連絡します。休業する労働者に対しては、傷病手当金などの経済的な保障や休業の最長(保障)期間等の必要な事務手続き、及び職場復帰支援の手順を説明します。
- 【第2ステップ】主治医並びに産業医による職場復帰の可否判断
- 休業中の労働者から事業者に対し職場復帰の意思が伝えられると、事業者は労働者に対して主治医による職場復帰が可能という判断が記された診断書の提出を求めます。診断書には、就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を記入してもらうようにします。その際、主治医による職場復帰可能の判断が、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等の精査を経て、採るべき対応を判断することが重要です。
- 【第3ステップ】職場復帰の可否判断及び職場復帰支援プランの作成
- 安全でスムーズな職場復帰を支援するため、最終的な決定の前段階として、必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰できるか否を適切に判断し、職場復帰を支援するためのプランを作成します。この具体的なプランは復帰中の就業上の配慮など個別具体的な支援内容を定めるもので、管理監督者、休業中の労働者の間で十分な打ち合わせをもったうえで定めます。
- 【第4ステップ】最終的な職場復帰の決定
- 上記内容を踏まえ、事業者による職場復帰の最終的な決定が行われ、具体的な支援が実行に移されます。
- 【第5ステップ】職場復帰後のフォローアップ
- 職場復帰後は、管理監督者による観察と支援のほか、事業内産業保健スタッフ等によるフォローアップを実施し、適宜職場復帰支援プランの評価や見直しを行います。
3 関連資料(法令、通達、ガイドラインなど)