安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
荷役(にやく、“にえき”ともいう)とは船荷を上げ下ろしすることが語源ですが、陸上で貨物の輸送機器への積み込みや荷下ろし、または倉庫やヤード等への入庫・出庫を総称した作業のことを荷役作業といいます。貨物を出し入れする輸送機器はトラック、貨物、船舶、航空機などがあります。
荷役作業ではクレーンによる貨物の上げ下ろし、コンベヤ、フォークリフト、ショベルローダ、移動式クレーン、ダンプトラックその他の荷役運搬機械(以下「荷役・運搬機械」という)などによる貨物の出し入れが行われる一方、人の力で行う作業などがあります。
陸上貨物運送事業における荷役作業は、陸上貨物運送事業者の直接管理下にある自社の倉庫や配送センター内で行われるものばかりではなく、直接管理が及びにくい荷主や配送先の事業場で行う場合が多いことが特徴として挙げられます。
陸上貨物運送事業における労働災害は、死亡および休業4日以上の死傷者数は横ばい状態(平成6年14,177人、25年14,190人)で、そのうちの約70%が荷役時の災害です。
また、荷役作業時の労働災害の発生場所は、約70%が荷主、配送先、元請事業者等(以下「荷主等」という。)の事業場となっています。
そのため、陸上貨物運送事業においては、荷役作業の安全対策が強く求められています。
・シートの掛け外し中 | 20.9% |
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・荷台からの意図的な飛び降りによる負傷 | 16.2% |
・荷締め荷解き中 | 10.5% |
・荷の積卸し中 | 8.6% |
・あおりに乗っての作業中 | 5.7% |
・その他 | 38.1% |
・フォークリフト | 70.0% |
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・クレーン | 24.4% |
・コンベヤ | 5.6% |
・荷主先等 | 65.8% |
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・自社構内 | 22.5% |
・その他 | 11.7% |
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署・陸上貨物運送事業労働災害防止協会
「荷役作業安全ガイドラインの解説」より
荷役作業の安全対策は、厚生労働省が平成25年3月25日に策定した「陸上貨物輸送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」基発0325第2号に示されており、荷主、配送先、元請け事業者等と陸運業の事業者が荷役作業を行う労働者とともに遵守することが強く求められ、次の項目から構成されています。
また同ガイドラインでは陸上貨物運送事業者と荷主等の実施事項が以下にように示されています。
項目 | 陸上運送事業者の実施事項 | 荷主等の実施事項 |
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荷主等の事業場での荷役作業の有無 | 荷主等に事前確認 未確認荷役作業を行わせない |
陸上運送事業者に通知 事前通知のない荷役作業を行わせない |
荷役作業がある場合 | 適切な安全衛生対策 | - |
貨物自動車運転者の着時刻 | - | 荷役時間、荷待ち時間、運転者の休息期間等に配慮した着時刻設定 |
服装や保護具 | 荷役作業場所、作業内容に配慮した服装、保護具着用 | - |
荷役作業場所の環境 | 安全な荷役作業環境の確保 | 安全な荷役作業環境の確保 |
不安全な荷役作業への対応 | 荷主等の不完全な荷役作業指示の報告と荷主等への改善要請 | 不完全作業改善要請への対応 不完全作業の改善要請 |