
安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
アーク溶接とは、溶接方法の一つで、空気(気体)中の放電現象(アーク放電)を利用し、同じ金属同士をつなぎ合わせる溶接法です。母材と電極(溶接棒、溶接ワイヤ、TIGトーチ等)の間に発生させたアークによってもたらされる高熱で母材および溶加材(溶接ワイヤ、溶接棒)を溶融させて分子原子レベルで融合一体化する接合法であり接着とはまったく異なる方法です。
アーク溶接には、被覆アーク溶接、ガスシールドアーク溶接(テイグ、ミグ、マグ溶接)、サブマージアーク溶接、セルフシールドアーク溶接、エレクトロガスアーク溶接等があります。
アーク溶接作業に係る労働災害の主要なものは次のとおりです。
に、事業者は“アーク溶接等(自動溶接を除く)の作業に使用する溶接棒等のホルダ−については、感電の危険を防止するため必要な絶縁効力及び耐熱性を有するものでなければ、使用してはならない。”と規定しています。
の規定に基づき、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置の接続及び使用の安全基準に関する技術上の指針が公示されました。アーク溶接のヒューム等の粉じんのうち、微細な粉じんは肺の奥深くの肺胞にまで入り込み、そこに付着します。これらの粉じんを吸い続けると、肺内では、線維増殖が起こり、肺が固くなって呼吸が困難となります。これが、「じん肺」です。じん肺の新規有所見者は減少傾向にあるものの、依然として新規有所見者が発生しており、そのなかでも業種別では、金属製品製造業、機械器具製造業、作業別では、岩石・鉱物・金属研磨等作業やアーク溶接作業に係る作業者の占める割合が以前と高い割合となっている状況です。
に基づき、全体換気装置による換気の実施又はこれと同等以上の措置を講じなければならないとされています。また、粉じん障害防止規則第6条
粉じん対策では、この同等以上の措置である局所排気装置、プッシュプル型換気装置、ヒューム吸引トーチの装置などの粉じんの発散防止対策を推進し、作業環境の改善を図ることを求めています。
に基づき、有効な呼吸用保護具を労働者に使用させなければならないとされ、労働者は、粉じん障害防止規則第27条第2項により、呼吸用保護具の使用を命じられたときは、当該呼吸用保護具を使用しなければならないとされている。なお、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、ヒューム吸引トーチ等の措置であって、アーク溶接作業に係る粉じんの発散を防止するために有効なものを講じたときは、その呼吸用保護具の使用義務が免除されています。
に基づく型式検定に合格しているものを使用しなければならないとされ、電動ファン付き呼吸用保護具については、日本工業規格T8157に定める電動ファン付粉じん用呼吸用保護具である必要があります。オゾンについて濃度基準値を超える懸念があることから、必要に応じ防じん機能付き防毒マスク等を着用することが望まれます。じん肺の他、ヒュームばく露は、肺がんの原因となります。次項に述べるアーク光の影響も併せて国際がん研究機関(IARC)は、溶接ヒューム及び溶接におけるアーク光がヒトへの発がん性あり(グループ1)と分類しています。また、溶接ヒュームに含まれる酸化マンガン(MnO)について神経機能障害、三酸化二マンガン(Mn2O3)について神経機能障害、呼吸器系障害があることが指摘されています。そのため、「金属アーク溶接等作業」(金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断し、又はガウジングする作業その他の溶接ヒュームを製造し、又は取り扱う作業)で発生する溶接ヒュームは特定化学物質に指定されており、労働安全衛生法令で以下の対策が必要とされています。
令和2年4月に特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正(塩基性酸化マンガンおよび溶接ヒュームに係る規制の追加)
がなされました。
