安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
高齢者とは何歳以上をいうかは統一的なものはありません。高年齢者、高齢者、中高年など類似の言葉がありますが、法令や行政においてもそれぞれで年齢を決めています。例えば、高年齢者等の雇用の安定に関する法では、高年齢者は55歳以上、中高年齢者を45歳以上としています。高齢者の医療制度では65歳以上75歳未満を前期高齢者、75歳以上を長寿(後期高齢者)としています。雇用保険では、64歳以前から引き続き雇用されていた人が65歳以上になると高年齢継続被保険者になります。道路交通法では70歳以上の免許更新者は高齢者講習を受ける、75歳以上の運転者は高齢者運転標識を表示するようにと定めています。高齢社会白書(内閣府)では、高齢者を65歳以上とし、65歳から74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者、生産年齢を15歳から64歳、年少を0歳から14歳としています。ここでは高齢者雇用安定法の55歳以上を高年齢労働者としましょう。
わが国は、急速に高齢社会に移行しつつあり、労働者の高年齢化が急速に進んでいます。 雇用労働者全体のうち50歳以上の労働者の占める割合は約3割となっています。たとえば工事現場では働く人の3人に1人が55歳以上となっています。しかもこれからより高齢化社会になろうとしているのですから、工事現場で働く人達の半分が55歳以上という時代もそんなに遠いことではありません。
このような中で、 高年齢労働者は、 災害発生率が若年労働者に比べて高くなっており、年齢階層別の年千人率をみると、50歳代では30歳代の1.5倍となり、60歳以上ではさらに高くなっています。この結果、50歳以上の高年齢労働者が休業4日以上の死傷災害全体に占める割合は、44%となっています。また、高年齢労働者は、若年労働者に比べて被災した場合にその程度が重くなるという傾向があります。
高齢社会においては、高年齢労働者がその活力を失わずにその能力を十分に発揮することが必要であり、そのような職場を作っていくことが、本人のためにはもちろんのこと、企業や社会全体の活力を維持するために非常に大切なこととなっています。
高年齢労働者は、一般に、豊富な知識と経験を持っていること、業務全体を把握した上での判断力と統率力を備えていることが多いなどの特徴がありますが、一方では加齢に伴う心身機能の低下が現れ、労働災害発生の要因の一つとなっています。
今後、ますます労働者の高齢化が進むものと予測され、高年齢労働者の労働災害を防止することは、 最も重要な課題の一つです。加齢に伴う心身機能の低下、 新しい機械・技術への対応、若年労働者とのコミュニケーションのあり方等を考慮して、機械設備・作業環境・作業方法の改善、健康の保持増進、快適な職場環境の形成、安全衛生教育の実施などの対策に取り組みましょう。
具体的対策として、厚労省の「高年齢労働者に配慮した職場改善マニュアル」があります。これは、高年齢労働者の方々が安全・健康に働き能力が発揮できるよう職場改善に取り組むためのチェックリストや改善事項を記載したパンフレットです。