安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
「被ばく」とは人体が電離放射線にさらされる放射線被ばくのことをいいます。被ばくは、「外部被ばく」と「内部被ばく」に分類されます。放射線発生源が人体の外部にあり、体外から被ばくすることを外部被ばくといいます。放射性物質を体内に摂取したために、体内から被ばくすることを内部被ばくといいます。
従来の外部被ばくは、宇宙線や天然放射性核種からの放射線など、人間の活動に関わりなく自然界にもともと存在する「自然放射線」によるものと、X線診断(一般撮影・CT)などの医療による被ばくが主なものでした。電離放射線障害予防規則は、医療用機器や研究設備が放射線発生源となって放射するアルファ線、ベータ線、中性子線、ガンマ線、およびエックス線の線量管理を行うものでした。しかし、平成23年3月の原子力発電所の事故では、人々が生活している広い地域まで放射性物質が飛散し、放射線が放出しました。放射性物質が放出されている場所の近くは外部被ばくの可能性が高くなりますので避難区域が設定されました。
現在は放射線量を低減する為に各地で除染作業等が進められています。除染作業に従事している人をはじめ、除染以外の復旧・復興作業でも放射線障害防止のための措置が義務づけられています。外部被ばくを最小限に抑えるように、「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」(以下「除染電離則」)が策定され、その除染電離則で定める内容を分かりやすくまとめたガイドラインなどが発行されています。
放射線を身体に受けた場合の影響の度合いを示す単位にミリシーベルト(mSv)を使用します。一般公衆の被ばく実効線量の限度は年間1mSvですが、放射線業務従事者・除染等業務従事者・特定線量下業務従事者の被ばく実効線量の限度(職業被ばく実効線量の限度)は法令により5年間で100mSv、年間50mSvと定められています。女性(妊娠する可能性がないと診断された方を除く)は3ヶ月で5mSv、妊娠中の女性は1mSvです。これらは国際放射線防護委員会(ICRP)が設定した職業被ばく限度と同じです。事業者は放射線業務や除染業務に労働者を就かせるときには、上記の限度を超えないようにしなければなりません。外部被ばく線量は、原則として個人線量計により測定して、その線量を法令で定める方法で記録し、30年間保存しなければなりません。
なお、内部被ばくによる線量の測定は、体内の放射性物質の量を評価するために、ホールボディカウンタ (WBC)、バイオアッセイ、空気中の放射性物質濃度測定による評価等による検査・測定を行います。この内部被ばくの線量は体内に摂取した放射性物質によりますので外部被ばくの線量とは直接の関連はありません。
除染事業者、一般の事業者、個人事業者、営農、営林作業のほか個人あるいはボランティアで除染作業にあたる場合も、出来るだけ外部被ばくの線量を少なくするように努めることが大事です。厚生労働省のホームページには多くの情報が掲載されていますのでご覧ください。