安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
産業の場に限らず、さまざまな場所で使用される設備、装置、機器類は、それを構成する部品の損傷や機能の低下を避けることはできません。このためにこれらの設備等に対する点検、整備が重要なことですが、一方、こうした事態が発生したときに、設備等に要求していた機能が不全になり、例えば不良品が発生する、危険な状態が現出するといったことが予想される場合には、これを防止する機能をあらかじめ備えておくことは大切なことで、こうした考え方をフェールセーフといいます。
フェールセーフは 労働災害防止の分野においても重要で、例えば、多くの産業機械に設けられる安全装置において、これを構成する部品の損傷や機能の低下によって安全機能が損なわれる場合には、機械を緊急停止させる、代替の機能により安全装置の機能を継続させる、作業点等危険な箇所への身体の侵入を不能にする等の措置が行われます。
工作機械等の制御機構のフェールセーフ化に関するガイドラインにおいては、システム又はこれを構成する要素が故障しても、これに起因して労働災害が発生することがないように、あらかじめ定められた安全側の状態に固定し、故障の影響を限定することにより、作業者の安全を確保する仕組みをいうとしています。 また、同ガイドラインでは、フェールセーフ化の対象とする制御機構は、原則として次の表に示す制御機構とするとしています。
制御機構の区分 | 内容 |
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1 再起動防止回路 | 急停止機構等の作動によって機械が停止したときや、停電後に機械への通電が復帰したときに、作業者が再起動操作をしなければ、機械を再び起動できないようにする回路 |
2 ガード用インターロックの回路 | 機械の運転中に作業者が危険領域内へ侵入するのを防止する回路。機械が停止した後にガードのロックを解除し、作業者が危険領域内へ侵入するのを許可する方式と、ガードを開いたときに機械が急停止する方式の2種類がある。 |
3 急停止用の回路 | 機械側で何らかの異常を感知したときに、直ちに機械の運転を停止させる回路。作業者がカードを開いたとき、安全装置が作動したとき、機械が何らかの故障や異常を起こしたときなどに作動する。 |
4 非常停止用の回路 | 作業者が何らかの異常を感知したときに、直ちに機械の運転を停止させる回路。機械の運転中に労働災害が発生しかねない不測の事態が起きたときや、機械に異常が生じたとき、作業中にトラブルが発生したときなどに作動させる。 |
5 行き過ぎ防止用の回路 | 機械があらかじめ設定した位置・角度等を超えて行き過ぎないように監視を行い、行き過ぎが生じたときは直ちに機械を停止させる回路 |
6 操作監視用の回路 | 作業者が正しい操作をしたときに限り、起動信号を発生させる回路 |
7 ホールド停止監視用の回路 | ホールド停止状態にある機械が故障や電磁ノイズ等に影響によって暴走しないように監視を行い、暴走が起きたときに直ちに機械を停止させる回路 |
8 速度監視用の回路 | 機械を低速状態で運転するときに、故障や電磁ノイズ等の影響によって機械があらかじめ定めた速度を超えて暴走しないように監視を行い、暴走が起きたときは直ちに機械を停止させる回路 |
9 ホールド・ツー・ランの回路 | 作業者が操作装置を押しているときに限って機械が運転を継続し、操作装置から手指等を離したときは直ちに機械を停止させる回路 |