安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
勤労者は、生活時間のおよそ3分の1を職場で過ごしています。職場は、いわば勤労者にとって職場は生活の場の一部といえます。その生活の場が暑すぎたり、寒すぎたり、汚れていたり、不自然な姿勢等の身体に負担がかかる作業であったり、人間関係が良くない場合には、その人にとって不幸であるだけでなく、生産性の面からも能率の低下をきたします。
そこで、職場の環境について現状を的確に把握し、職場の意見、要望等を聞いて、快適職場の目標を掲げ、計画的に職場の改善を進めることが必要です。例えば、適切な温度・湿度の管理を行う、力仕事を少なくして作業者の心身の負担を軽減する、疲れた時に身体を横にすることのできる休憩室等を設置する等の措置を行います。
このように職場を疲労やストレスを感じることの少ない快適なものとすることは、職場のモラールの向上、労働災害の防止、健康障害の防止が期待できるだけでなく、事業活動の活性化にも良い影響を及ぼします。
人が快適と感じるかどうかは、個人差があり、職場の環境という物理的な面のみでは測れませんが、多くの人にとっての快適さをめざすことを基本としつつ、各個人差にも配慮する努力を行うべきです。また、快適化の第一歩は作業環境等のハード面の改善を行い、人が不快と感ずる要因を取り除くことですが、それだけでなく、労働時間、安全衛生管理の水準、職場の人間関係、働きがいなども、人が快適さを感じるための重要な要因です。
さらに、最近の技術革新、サービス経済化、グローバル化の進展等による労働環境、就業形態の変化、中高年齢者や女性労働者の割合の増加等、職場をめぐる環境が著しく変化する中で、より一層の「快適さ」が求められています。
安衛法では、第1条の「目的」に「この法律は、労働基準法(昭和22年法律第49号)と相まって、労働災害の防止〜(略)〜労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする」と定めるとともに、その第7章の2を「快適な職場環境の形成のための措置」として、第71条の2(事業者の講ずる措置)、第71条の3(快適な職場環境の形成のための指針の公表等)及び第71条の4(国の援助)の3条を置いています。
安衛法第71条の2では「事業者は、快適な職場環境を形成するよう努めなければならない」旨を定めています。同法第71条の3では、その事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置を適切かつ有効に実施するため、厚生労働大臣により「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(平成4年労働省告示第59号)(快適職場指針)が公表されています。この快適職場指針のめざすものは、「仕事による疲労やストレスを感じることの少ない、働きやすい職場づくり」です。
(快適職場指針の概要)
「快適職場指針」では、次の4つの視点から措置を講じることが望ましいとしています。
また、快適職場指針では、快適な職場環境づくりを進めるに当たって考慮すべき事項として、[1] 継続的かつ計画的な取り組み、[2] 労働者の意見の反映、[3] 個人差への配慮 及び [4] 潤いへの配慮 の4点をあげています。
職場における喫煙対策については、平成8年2月21日付け基発第75号「職場における喫煙対策のためのガイドライン」にて推進していたところ、平成15年5月1日に健康増進法(平成14年法律第103号)が施行され、事務所その他多数の者が利用する施設を管理するものに対し、受動喫煙防止対策を講ずる努力義務が課せられたことに伴い、同年5月9日に「職場における喫煙対策のためのガイドライン」 が改正され(平成15年5月9日基発第0509001号)、一定の性能を有する喫煙室の設置等による受動喫煙防止対策が求められました。
その後、平成30年7月に健康増進法の一部を改正する法律(平成30年法律第78号。以下「改正法」といいます。)が成立・公布されました。改正法は、国民の健康の向上を目的として、多数の者が利用する施設等の管理権原者等に、当該多数の者の望まない受動喫煙を防止するための措置義務を課すものである一方、安衛法は、職場における労働者の安全と健康の保護を目的として、事業者に、屋内における当該労働者の受動喫煙を防止するための措置について努力義務を課すものです。そこで、改正法による改正後の健康増進法で義務付けられる事項及び安衛法第 68 条の2により事業者が実施すべき事項を一体的に示すことを目的に、「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」(令和元年7月1日付け基発0701第1号)が策定されました。
職場における受動喫煙防止対策を効果的に進めていくためには、企業において、組織的に実施することが重要であることから、職場における受動喫煙防止のためのガイドラインでは、以下のとおり、受動喫煙防止対策の組織的な進め方を示しています。