安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
ロープ高所作業とは、高さが2メートル以上あり、作業床を設けることが困難なところで、いわゆるブランコなどの昇降器具(作業箇所の上方にある支持物にロープを緊結してつり下げ、このロープに労働者の身体を保持するための身体保持器具を取り付けたもので、労働者自らの操作により昇降する)によって身体を保持しつつ行う作業をいいます。
労働安全衛生法令は、高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合には、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けることを事業者に義務付け、作業床の設置が困難なときには労働者に安全帯を使用させる等、代替の墜落防止措置も認められていますが、業種や作業態様によらず、高所作業の墜落防止措置は原則作業床に設置することとしています。
しかしながら、ゴンドラや足場等、作業床の設置が困難な場合における高所作業では、ロープ高所作業を採用せざるを得ないのが現状で、ロープ高所作業では、ロープの結び目がほどける、ロープが切れる等により墜落した死亡災害が、平成21年から平成26年の6年間で、ビルメンテナンス業では計13件、建設業では計11件発生しています。
このような状況を踏まえ、厚生労働省は、「ロープ高所作業」について労働安全衛生規則及び安全衛生特別教育規程の改正を行いました。
改正労働安全衛生規則は、平成28年1月1日(一部平成28年7月1日)に施行され、改正安全衛生特別教育規程は、平成28年7月1日に施行されます。
高さが2メートル以上の箇所であって作業床を設けることが困難なところにおいて、いわゆるブランコなどの昇降器具(作業箇所の上方にある支持物にロープを緊結してつり下げ、当該ロープに労働者の身体を保持するための器具を取り付けたものであって、労働者自らの操作により上昇し、又は下降するものをいう。)を用いて、労働者が当該器具により身体を保持しつつ行う作業を「ロープ高所作業」としています。但し、勾配が40度未満の斜面における作業は含まれません。
ロープ高所作業を行うときは、身体保持器具を取り付けた「メインロープ」以外に、安全帯を取り付けるための「ライフライン」を設けることとしています。なお、ライフラインとしてリトラクタ型墜落阻止器具を用いることもできます。
メインロープ、ライフライン、これらを支持物に緊結するための緊結具、身体保持器具とこれをメインロープに取り付けるための接続器具は、十分な強度があり、著しい損傷、摩耗、変形や腐食がないものを使用する必要があります。
またメインロープ、ライフライン、身体保持器具については、以下の措置を講じなければならないとされています。
ロープ高所作業を行うときは、墜落または物体の落下による労働者の危険を防止するため、予め作業を行う場所について、次の項目を調査し、その結果を記録しなければいけないものとされています。
調査を踏まえ、ロープ高所作業を行うときは、予め、次の項目が示された作業計画を作成し、関係労働者に周知し、作業計画に従って作業を行わなければならないとされています。
ロープ高所作業を行うときは、その作業を指揮する「作業指揮者」を定め、作業計画に基づく作業の指揮や、メインロープ、ライフライン、身体保持器具への適切な措置が講じられているかどうかの点検、作業中の安全帯と保護帽の使用状況の監視を行わせなければいけないと定められています。
ロープ高所作業を行うときは、当該作業を行う労働者に安全帯を使用させ、その安全帯をライフラインに取り付けさせなければならないとされています。
また、作業を行う労働者は、安全帯の使用を命じられたときは、これを使用しなければならないとされています。
ロープ高所作業を行うときは、物体の落下による労働者の危険を防止するため、労働者に保護帽を着用させなければならないとされています。
また、その作業を行う労働者は、保護帽の着用を命じられたときは、これを着用しなければならないとされています。
ロープ高所作業を行うときは、作業を開始する前に、メインロープ等、安全帯及び保護帽の状態について点検し、異常を認めたときは、直ちに、補修し、又は取り替えなければならないものとされています。
労働者をロープ高所作業に関する業務に就かせるときは、次に掲げる内容と時間、安全のための特別の教育を行う必要があります。
ロープ高所作業のうち、ビルクリーニングの業務に係る作業や法面保護工事に係る作業以外の作業(橋梁、ダム、風力発電の調査、点検、検査を行う作業等)については、[1]及び[2]の措置を講じた場合に限り、当分の間「ライフラインの設置」の規定は適用しないこととされています。