安全衛生のキーワードで関心が高いものについて解説しています。
石綿(アスベスト)は、天然の繊維性けい酸塩鉱物の総称です。国際労働機関(ILO)は「石綿(アスベスト)とは蛇紋石および角閃石グループに属する繊維状の無機けい酸塩鉱物」と定義しています。日本語では、「いしわた」「せきめん」、英語では「Asbestos(アスベスト)」と言います。世界保健機構(WHO)の付属機関である国際がん研究機関(IARC)により、「人への発がん性あり(グループ[1])」と勧告されています。石綿には、角閃石系石綿と蛇門石系石綿があります。角閃石系の石綿繊維にはクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アクチノライト、トレモライト、アンソフィライトの5種類があり、蛇紋石系にはクリソタイル(白石綿)があります。
石綿は軽く綿状の性質であることは、様々な形に加工しやすく、吸音や吸着性、引っ張る力にも強く、断熱性、耐火性、電気絶縁性、耐酸性、耐アルカリ性といった特徴がある反面、眼に見えないサイズで容易に飛散する欠点でもあり、安定な鉱物である性質は、肺に吸入されても石綿繊維は分解されずに、本来異物の消化を行う肺のリンパ球系の細胞が死滅してしまう短所もあります。
石綿の繊維はきわめて細いため、研磨機、切断機等の設備での使用や飛散しやすい吹き付け石綿の除去等において、所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が吸入してしまうおそれがあります。以前は、ビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われましたが、昭和50年に原則禁止されました。
その後もスレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材等で使用されましたが、現在では、製造等が全面禁止されています。石綿を取り扱う作業に従事していた人で、一定の要件に該当する人は、健康管理手帳の交付を受け、指定された医療機関で定められた項目の健康診断を無料で受けることができます。
石綿は、そこにあること自体が直ちに問題なのではなく、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、建築基準法、廃棄物の処理および清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。
石綿が使用されている建築物等の解体作業等については、労働安全衛生法や石綿障害予防規則等の規定の措置を講じて、労働者への石綿のばく露を防止しなければなりません。
また、平成18年3月には、石綿による健康障害の救済に関する法律が施行され、石綿による健康被害者やその遺族に対し医療費等が支給されることになりました。