海藻から食品添加剤を製造する工場において、反応容器内に付着した粉体をヘラで掻出中に爆発
業種 | 無機・有機化学工業製品製造業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 引火性の物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 爆発 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 不適当な工具、用具の使用 | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | 危険物が入っているものの |
No.100831
発生状況
この災害は、食品医薬品等の添加剤(アルギン酸プロピレングリコールエステル)製造工場において、化学反応容器内壁に付着した反応生成物を塩化ビニル製ヘラで回収作業中、反応容器内部で爆発が起こったものである。 この工場では、海藻から原料成分を炭酸ソーダで抽出し、硫酸で中和し、メタノールで脱水して精製したゲル(70kg)を、横型の回転式ジャケット付反応器(内容積:643リットル)に酸化プロピレン(82リットル)とともに仕込み、温水をジャケットに通しながら、70℃まで3時間ほどかけて段階的に温度を上昇させてエステル化反応を起こさせ、反応終了後にエステル化物を容器から取り出して、乾燥、粉砕して製品とする。 作業は、3直3交替制による24時間操業で実施されていた。 災害発生当日午前6時、被災者ら3名は、前任者から引き継いでエステル化反応の作業を続行した。 反応終了後、酸化プロピレンなど未反応のガスを回収すると同時に、容器を常温にまで下げた後、マンホールの蓋を開放して、反応器を回転させながらエステル化物をマンホールから受皿に取り出した。しかし、反応容器の内面には粉状の生成物が付着しているので、作業員が塩化ビニル製のヘラで突いたとき、突然反応容器内で爆発が生じ、作業者が爆風で吹き飛ばされた。 |
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 | |
1 | 反応に使用した酸化プロピレン(1,2−エポキシプロパン、C3H6 O、沸点34℃、引火点−37℃、爆発範囲2〜38.5vol%)またはメチルアルコールが反応終了後に回収しきれず、反応容器中に残留し、マンホールを開いた時に、空気と爆発混合気を形成したこと。 |
2 | 反応容器の回転により、製品の粉状のエステル化合物に静電気の帯電があったこと。 |
3 | 残留していた製品の掻き出しに使用したヘラが、塩化ビニル製でヘラの取付部に金属製のボルトを使用していたため、ヘラで残留物を突いた時、粉体とヘラ金属部の間で静電気放電が生じ、酸化プロピレン、メチルアルコールの蒸気に着火爆発したものと考えられる。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 反応に使用した酸化プロピレンやメチルアルコールは、反応終了後は気化して残留しているのでよく回収しておくこと。 |
2 | マンホールを開けたときに、空気が流入して爆発混合気が形成するおそれがある場合には、窒素ガスなどで置換しておくこと。 |
3 | 容器内の粉体は、回転、接触、摩擦などにより粉体に静電気が帯電するので、容器を接地するとともに、ヘラなど取扱器具、作業服、作業靴、作業床も導電性のものを使用し、帯電電荷を速やか除去すること。 |
4 | 粉体の取出作業など、静電気放電により着火爆発の危険性のある作業を行う場合には、事前に作業手順を作成しておくこと。 |