厨房室内装工事中の熱中症
業種 | 建築設備工事業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 高温・低温環境 | |||||
災害の種類(事故の型) | 高温・低温の物との接触 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | 建築設備工事 | ||||
災害の種類 | 高熱物等による | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.885
発生状況
本災害は、レストラン改修工事において、厨房室の内装工事を担当していた作業者が、折からの猛暑による室内温度の上昇により意識を失って倒れ、死に至ったものである。災害当日、作業者Aは他の作業者4名とともに、厨房室内の給排水管埋設のため床部分のコンクリートの解体作業に従事していた。
作業方法は、はつり工2名がコンクリートブレイカーを用いてコンクリートを解体し、Aを含む残りの3名がねこ車(運搬用手押車)により解体した残コンクリートを厨房室外に運び出すものであった。
なお、ねこ車による運搬は1回当たり10分程度を要し、1時間に4回から5回の往復作業を行っていた。また、厨房室内では、コンクリートを解体する際に発生する粉じんを抑えるために、適宜散水を行うとともに、労働者すべてが使い捨て式防じんマスクを着用していたが、換気設備は設けておらず、室内の空気が滞留しやすい環境にあった。
午後2時30分頃、Aは、ねこ車を押して厨房室中央まで運び、はつり工が残コンクリートを積み込んでいるのを待っていたところ、突然後ろ向きに倒れかけた。他の作業者はAを抱きかかえて仰向けに寝かし、しばらく様子を見ていたが、Aの意識がもうろうとしてきたため、救急車を呼び、Aを病院に運んだが、数時間後に死亡した。Aは解剖の結果、熱中症とされ、また、当日の気象状況は、午後2時で気温35.4度、湿度58%、午後3時で気温35.6度、湿度59%であり、厨房室内温度は40度前後まで上昇していたと推定される。
原因
[1] Aの作業内容自体は重労働とはいえないが、厨房室内は、高温、多湿、粉じんが重なりあった劣悪な作業環境であったこと。とくに、災害当日は猛暑であり、換気もされていないことから、著しい高温下での作業であったこと。[2] Aは、昼休み時間中に、気分がすぐれないと漏らしていたにもかかわらず、作業を続行したこと。
対策
[1] 作業開始前に、作業者の健康状況を確認し、健康がすぐれない場合には、作業量を軽減するなど、作業者に過重な負担がかからないよう配慮すること。[2] 作業場が高温又は多湿になる場合には、強制換気装置の活用等により換気を行うとともに、猛暑の日にはできるだけ日中の作業を減らすなど作業計画を工夫すること。
[3] 気温の高い場所で作業を行う場合には、適度の水分及び塩分の摂取に留意すること。