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労働災害事例

紫外線殺菌装置による目の障害

紫外線殺菌装置による目の障害
業種 病院
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) 有害物
災害の種類(事故の型) 有害物等との接触
被害者数
死亡者数:− 休業者数:7人
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.852

発生状況

本災害は、病院内の手術室、病室等の室内殺菌用として新たに導入した紫外線による移動式室内殺菌装置(以下「装置」という)の取り扱い説明を受けていた際、スイッチ類の操作説明等のため動作させた紫外線ランプから紫外線が発生し、説明を受けていた看護婦数名が目の痛みを訴えたものである。
 本装置は、病院等の室内を殺菌する目的で開発された装置である。従来、病院等の室内殺菌は、薬液等を噴霧して行っていたものであるが、本装置は、紫外線の殺菌作用を利用することにより、薬液等による健康障害をなくし殺菌効果を得るようにした装置である。
 装置は、図のように、家庭用交流100V電源を使用し、長さ約80cmの露出した殺菌ランプ(30W)4本が立てられており、下部にコントロールパネルが設置された簡単な構造となっている。その下にはキャスターが設けられ、1人で簡単に移動できるようになっている。また、コントロールパネルには、瞬間に紫外線が発生しないようタイマー付きスイッチが内蔵されている。これにより、スイッチを入れて約3分後に紫外線ランプが点灯する構造となっている。
 災害のあった、この病院では、装置の導入に当たって実際に取り扱いに従事する看護婦等に対して、操作および取り扱いの方法を理解させるため、業者に説明をさせることとした。
 災害発生当日の午後4時ごろ、装置の納入業者であるAは、病院を訪れレントゲン室に装置を持ち込み説明を行うこととなった。病院事務長Bのほか、そのとき、たまたま手のあいていた看護婦C他6名が取り扱いの説明を受けることとなった。説明に際しては、Aは装置の近傍で操作に当たり、それを取り巻くようにしてCら8名が半径約1.5m以内に立って説明を聞いていた。
 Aは、レントゲン室内の電源コンセントに装置を接続してスイッチを入れ説明を始めた。約3分後、殺菌ランプが点灯したものの、特に注意を喚起することもなく、点灯されたままの状態で説明が続けられた。Aは、5分後にスイッチを切り、さらに説明を続け約10分程度で終了した。
 説明終了後、各看護婦はレントゲン室を出て、それぞれ持ち場へ戻っていった。ところが、2時間後の午後6時ごろ、まず、Cが目の痛みを訴え、その後午後10時までの間に、説明に立ち会った者が次々と目の痛みを訴えた。
 発症した被災者は、その当日ないし翌日までに眼科にかかる等して目薬をさし、1日間から2日間休業の後全快した。また、説明を行ったAと事務長Bは、発症しなかったが、居合わせた者の中で、たまたま両名だけが眼鏡(紫外線保護用眼鏡ではない。)をかけていたので、紫外線のばく露が少なくて済んだものと考えられる。

原因

(1) 紫外線を使用している装置のランプを何ら保護具を使用することなく肉眼で直視していたこと。
(2) 装置の取り扱い説明者が、その危険性、有害性を十分認識せず、従って説明を受ける者に対し何ら防護措置を取らせることなく、紫外線を発生させた状態で説明を行ったこと。
(3) 使用者が、従業員に装置の使用説明を受けさせるに当たって、あらかじめその危険性を認識していなかったこと。
(4) 装置本体に危険性の表示が十分なされていなかったこと。

対策

(1) 紫外線等の目に対して有害な光線を発する装置を取り扱う場合には、保護眼鏡等を着用させること。
(2) 使用者は、新規に機械等を導入する場合においては、あらかじめ機械製造者と連携をとり、その危険性等を十分に理解し、従業員への健康障害が起こらないような対策を講じた上で作動させること。
(3) 新規に機械を導入する場合には、当該機械の危険性、有害性等に留意の上、作業標準書を作成すること。
(4) 装置本体の見やすい個所に、危険性等が容易に分かるような表示を設けること。