半製品の搬送用ロボットに挟まれ死亡する
業種 | 自動車・同付属品製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 産業用ロボット | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.670
発生状況
本災害は、自動車製造業のアルミ鋳造工場において、車のシリンダーヘッド鋳造ラインの工程で、半製品(以下「ワーク」と言う)を搬送する移載装置(産業用ロボットに該当する。以下「ローダー」と言う)のクランプに、被災者が挟まれて死亡したものである。このローダーは、油圧にてワークを把持(クランプ)し、装置のシリンダーが、上下、前後および左右に移動して把持物を移動できる機械装置で、一種の産業用ロボットに該当するものであった。
災害発生当日、被災者は、三交替勤務の二番方で、午後9時30分ごろに鋳造ライン作業に従事していた。
被災者は、経験年数4年の鋳造工であったが、鋳造ラインはほぼ自動化されており、ラインの流れを見守り、ワークが順調に流れていくことを管理していた。
このような状況の中で、同時刻に、鋳造されたシリンダーヘッドを次の工程(鋳砂落とし機にかける)に搬送するローダーのクランプに、被災者が挟まれて倒れているのを隣のラインの者が見つけ、驚いて、工場関係者とともに被災者を病院へ運び込んだが、まもなく死亡したものであった。
災害の原因となったローダーは、前工程のローラーコンベヤーで、4個のワークが運ばれて来て、そのワークをクランプ部で1個ずつつかみ、次の工程に搬送する設備であり、通常は危険で、立ち入る必要がないために、リミットスイッチ付きのドアが開口部に設置されていたのであるが、被災者は、このローダーに何らかの異常を発見してドアを開け身を乗り入れ、クランプ部分に挟まれ被災したものと思われる。
なお、ローダー操作盤上の電源スイッチは、通常のまま自動運転の状態となっていた。
原因
[1] 動力源スイッチを切ることをせず、開口部のドアを開けて入ったこと[2] 開口部のドアについては、インターロック機構となっていたにもかかわらず、ドアを開放した状況でローダーが停止せず、インターロック機能を発揮しなかったこと
などがあげられる。
被災者が、何らかの理由で独自に判断して、調整すべく、ドアを開けて危険区域へ立ち入ったものと思えるが、基本的に、作業者の行動として、電源を切って、ラインを完全に停止させず、危険区域に立ち入ったことなどが原因である。
対策
[1] 異常時の点検等には、確実に電源を切って、機械を停止させてから行うこと。その際には、作業手順をあらかじめ作成し、確実にそれに基づいて作業を遂行するとともに、必要に応じて専門的知識を有する者の指図によることが望まれること。[2] インターロック式の開閉ドアは、ドアを開放した場合には、必ずラインの停止を行うべきであり、日ごろから、それらの機能について点検を確実に実施しておくこと。
最後に、産業用ロボット等では、ホールド状態(電源が入ったままで、ロボット等が停止している状態)において、故障や電磁ノイズ等により、アクチュエーター(この災害の場合、シリンダー、クランプ等)が不意に作動する場合があるので、このような事態が生じた場合、電源をしゃ断し完全停止(「セーフティーホールド」と言う)させるセンサー(サーボ電流またはロボットアームの位置を監視させる機能を持つ)の設置が、今後の課題と言えよう。