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労働災害事例

玉掛けワイヤロープが切断し吊り荷の下敷きになり死亡

玉掛けワイヤロープが切断し吊り荷の下敷きになり死亡
業種 特定貨物自動車運送業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 玉掛用具
災害の種類(事故の型) 飛来、落下
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.63

発生状況

(1) A運送会社は、H製作所より、同社で製作された鋼製収納庫の運送を受注した。内容は、翌日に工場で収納庫を受取り、それをA運送会社の倉庫に一時保管し、後日、指定場所に運送するというものであった。
(2) A運送会社の配車係は自社に空車がなかったため、協力会社のB運送会社に、工場から自社倉庫までの運送を注文した。
(3) 災害発生当日、B運送の運転手である被災者Cが出勤すると、配車係から上記工場からA運送会社倉庫までの運送を指示された。
 被災者Cは午前10時頃、4tトラックを運転して工場へ行き、鋼製収納庫(3.1m×3m×2.15m、4.17t)をトラックに積んだ。この積載作業は、当工場の天井クレーンを使用して、全て工場の従業員が行った。
(4) 被災者Cは、工場からA運送会社への運送の途中、昼食時間になったので自社に寄って休憩した。休憩後、出発するときB運送会社の配車係が、当日午後、A運送会社付近の工場に鉄骨の積込み予定があったD運転手に対し、A運輸会社に寄ってC運転手の荷降ろしを手伝うよう指示した。
(5) 13時40分頃、被災者C運転手は、D運転手とともに、A運送会社に着き送り状を渡すと、A運送の配車係は、荷を倉庫の奥に降ろすように指示したD運転手が、自分のトラックの荷台からワイヤロープ(径10mm、長さ1m)を持ってきたので、それを使用することにし、このワイヤロープを先に取りつけた2本のワイヤロープの間に通し、天井クレーンのフックに掛けた。
(8) 次いで、A運送会社のF運転手が天井クレーンを操作し、まず、荷を少し引き上げたが、その時点で、既に天井クレーンの巻き上げ用ワイヤを一杯に引き上げた状態となり、荷の底は、トラック荷台から5〜6cm程度浮いていた状態であった。
 この状態で、玉掛けをした3人は、荷が振れないようそれぞれが荷に手を副え、荷台の左側方へ移動を始めた。
(9) 荷台上を約1m程度移動させたとき、突然フックに掛けていた玉掛用ワイヤロープが切断、荷はトラック荷台上から地上へ、横倒しの形で落下した。
 荷物に手を副えていた3人は、とっさに逃げたが、荷の進行方向に位置していた被災者Cは逃げきれず、倒れた荷の下敷きになって死亡した。

原因

(1) 強度が不十分なワイヤロープを使用したこと、及び玉掛け方法が適切でなかったこと。
(2) クレーンの定格荷重をこえる荷重の荷を吊ったこと。
(3) クレーンを運転した者が、クレーン運転に係る特別教育を受けていなかったこと、及び玉掛け作業者が無資格であったこと。
(4) 荷の移動中、荷の進行方向へ荷に触れながら移動したこと。
(5) 作業指導者を定めていなかったこと。
(6) A社とB社との間で、貨物の積卸し場所での連絡調整が十分行われていなかったこと。

対策

(1) 玉掛けに使用するワイヤロープは、安全係数が6以上となるものを使用し、吊り角度が60度以内となるよう、適切な長さのものを使用すること。
(2) クレーンの定格荷重をこえる荷を吊らないこと。
(3) つり上げ荷重が5t未満のクレーンの運転業務は、クレーン運転士免許を有する者または特別教育を受けた者に行わすこと。
(4) つり上げ荷重が1t以上のクレーンを使用して玉掛け作業を行う場合は、玉掛技能講習修了の資格を有する者に行わせること。
(5) 荷の進行方向に、荷に近接して作業者を配置しないこと。
(6) 作業指揮者を定め、その者に作業の指揮を行わせること。
(7) A社とB社との間で、事前に荷の品目、重量荷姿等を含む作業内容について連絡調整を行い、資格を要する作業については、資格者の配置について確認すること。
(8) 積卸し作業に係る作業マニュアルを作成し、関係作業者に安全教育を実施すること。