フライス盤に巻き込まれ死亡
業種 | 機械(精密機械を除く)器具製造業 | |||||
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事業場規模 | − | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | ボール盤、フライス盤 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.542
発生状況
被災者の所属する事業場は、工作機械、減速機等の機械器具を製造しており、工場には旋盤、フライス盤、ボール盤等の工作機械が設置され、これらの機械により金属材料を加工し、組立てを行っていた。災害発生当日、被災者は朝から一人でフライス盤を使用し、切削加工を行っていた。使用していたフライス盤は刃物軸が上下方向となっている立てフライス盤であり、刃物は直径10cmの傘型のものである。
加工を行っていた物は、試作中の工作機械の部品であり、縦約10cm、横約8cm、厚さ約3cmの鋳物の鉄片である。被災者はこれを3枚重ね、まとめて端面の切削加工を行っており、フライス盤上の万力(バイス)により鉄片を固定し、加工していた。フライス盤の回転数は545回転/分にセットしていた。
被災者は、鉄片の4つの端面を順次切削加工し、3面目が終わったところで、万力から外し、フライス盤のテーブル上に置いた。4面目に取りかかる前に万力のあたりに散らばっている切粉を手で払っていたとき、手にはめていた軍手がフライス盤の刃物に巻き込まれ、さらに作業服の腕部分も巻き込まれた。
被災者のすぐ隣りで旋盤作業を行っていた作業者が、被災者の悲鳴を聞き、ただちにフライス盤の非常停止スイッチを押し、刃物の回転を止めた。被災者は救急車により病院に運ばれたが、死亡した。
被災者の服装は、会社から支給されている作業服上下であり、頭は作業帽を被り、靴は安全靴であった。手には軍手を2枚重ねてはめていた。
原因
[1] 軍手を着用して作業を行っていたこと。フライス盤、ボール盤等、刃物が回転する工作機械においては、刃物の端部等に手袋が引っかかり巻き込まれる危険が高い。このため、労働安全衛生規則においてもボール盤、面取り盤等の回転する刃物に作業中の作業者の手が巻き込まれる恐れがあるときは、作業者に手袋を使用させてはならないこと、また、作業者は手袋の使用を禁止されたときは、これを使用してはならないことが定められている。災害が発生した事業場では、フライス盤等の作業においては手袋を使用しないよう定めていたが、十分に徹底されていなかったようである。[2] フライス盤を止めないで加工物の取り外しを行ったこと。(加工物を交換するような場合、切粉を掃除する場合などは手を刃物に近づけることになり危険である。)
対策
[1] 作業標準を定め、危険な作業を禁止するとともにその徹底を図ること。手袋をはめての作業、機械を運転しながらの作業は明確に禁止すること。また、その徹底を図るため、作業場内に指示することはもちろん、作業者に対し繰り返し教育を行うこと。
[2] 作業者の安全意識の高揚を図ること。
経営トップが安全最優先の姿勢を示すとともに、作業者に安全作業が定着するようツールボックスミーティング等種々の安全活動を展開し、作業者の安全に対する意識の啓発を継続的に行うこと。