林内作業車を集材機として使用中、そのウィンチに巻き込まれて死亡
業種 | 木材伐出業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の動力クレーン等 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.215
発生状況
〔現場の概況〕災害発生現場は、なだらかな山林地帯で、アカマツ、コナラ、クヌギ等の雑木の密生している林に覆われた山の谷筋で、傾斜角度は20度から29度の斜面である。
作業は、パルプ用材の伐採・集材で、谷筋に沿って全長約140メートルの長さにワイヤロープを張り巡らし、ウインチ搭載型の林内作業車を据えつけて、これを集材機として使用して集材を行っていたものである。
この場合の索張方式は、次の図のとおり主索を用いない方式の「ハイリード式」に区分される。
滑車は、一番高いもので地上から30センチメートル程の高さに固定されており、元柱、先柱及びその他のガイドブロック用に五つ使用されている。
木材の搬出方法は「地引式」で、ホールラインとホールバックラインの結合部分にスリングロープを固定して、ウインチドラムでホールラインを巻取り、これにより木材を引き寄せる方法である。
引き寄せ後はエンドレスドラムでホールバックラインを巻き取ることにより、スリングロープを再び搬出現場に引き戻すものである。
〔災害発生時の状況〕
災害発生の直前、作業者Aは、まず、搬出してきた木材のスリングロープを外し、その後集材機のウインチを運転して、スリングロープを谷の上方の伐採現場に返戻(エンドレスドラムでホールバックラインを巻き取る)する作業を行っていた。
このとき、作業者Bがホールバックラインを掴んで、その牽引力を利用して谷をよじ登っていた。
突然ワイヤーロープの動きが停止し、作業者BがAの方を見たときAはエンドレスドラムに巻き込まれていたので、直ちにエンジンを止め、ワイヤロープを切断したがすでに死亡していた。
このとき巻き取ったホールバックラインの長さは、約10メートルであった。
また、事故後のワイヤロープの状況は、乱巻き状態となっていた。
被災状況からみて、被災者Aは事故当時ウインチの運転位置を離れて、ドラムの前面に立ち入ったものと推定できる。
〔使用機械の概況〕
クローラー式
荷台
・ 最大積載量 850kg
サイドポール
・ 鳥居式釣上げポール付
ウインチ
・ 巻込容量 φ8mm×100m
・ 直引能力 800kg
[1] ウインチドラム(巻込速度メートル/分)
正・逆
・ 一速 5.3〜19.2
・ 二速 13.3〜48.5
[2] エンドレスドラム([1]に同じ)
正・逆
・ 一速 34.5
・ 二速 87.0
据付け状況
・ 左右及び後方をワイヤロープで固定
・ ドラムの前に棒を二本立てて乱巻き防止対策としていた。
・ 各ドラムから滑車(滑車1及び滑車5)に対する角度はほぼ直角であった。
原因
ドラムの前に棒を二本立てて乱巻き防止対策としていたが、不十分であったこと。被災者Aは、集材機の通常運転中危険箇所に立ち入って乱巻き修正をしたこと。
(乱巻きを直そうとして事故に遇ったのか、事故のため乱巻きになったかは特定できないが、被災者がドラムの付近に立ち入っていたことから、前者の可能性が十分考えられる。)
対策
(1) ウインチの乱巻きを防止するための確実な装置を設けるか、又は多少の乱巻きに対応できる形状のドラムとする等の設備的な対策を講ずること。また、万一乱巻きが生じたときには、安全な方法で巻き直しをすること。
(2) 危険範囲を立ち入り禁止にすること。
(3) 機械の運転者に対する安全教育等の実施をすること。
なお、作業者Bがホールバックラインを掴んで、その牽引力を利用して谷をよじ登っていたことと乱巻きが発生したこと等本件災害発生との因果関係は必ずしも結びつかないが、これは非常に不安全な行動であるので、作業行動全般についても見直しを行い、安全な作業方法についての教育を徹底すること。