フォークリフトのマストとヘッドガードにはさまれ死亡
| 業種 | 特定貨物自動車運送業 | |||||
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| 事業場規模 | 30〜99人 | |||||
| 機械設備・有害物質の種類(起因物) | フォークリフト | |||||
| 災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
| 被害者数 |
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| 発生要因(物) | ||||||
| 発生要因(人) | ||||||
| 発生要因(管理) | ||||||
No.17
発生状況
(1) 被災者が所属するA運輸(株)は、B社と契約しB社の段ボール工場で製作された製品を、注文先に輸送する業務を行っており、そのためA運輸はB社工場構内にトラック12台、作業者10名を常駐させている。(2) B社工場の製品は、おおむね段ボールを箱形に成形し、折たたんだものを20枚程度ずつ束ね、B社作業者が倉庫に搬入或いは倉庫前に仮置きし、A運輸作業者が自社のトラックに積込み注文先に配送するのが例であった。
(3) 災害当日、被災者は同僚と2人で14時頃2回目の配送準備にかかったが、荷は工場で出来上ったばかりの段ボール箱(1束20枚のパレット荷)で、倉庫前に木製パレット1枚あたり65束を13段積にして仮置されていた。
(4) 被災者は、フォークリフト(1.5トン)を運転し、パレット積された前記の荷を4トンバン型のトラックに積込もうとしたが、トラック荷台天井高さ1.93mに対し、荷の高さがパレットを含め1.89mとぎりぎりであったため、荷の上部が天井につかえて手前(運転席側)に崩れかかった。
(5) 被災者は、この崩れを直すため、フォークリフトを若干後退させ、荷の高さをそのままとしてフォークリフトを停止、エンジンを切らず運転席の前(メーターパネル部分)に上り、マストとヘッドガードの間に身体を入れて立ち、荷の上部を両手で押して崩れを直しはじめた。
このとき被災者の足元を目撃した者はいないが、誤って足が「テイルトレバー」(マストを傾斜させるレバー)に接触したものと推定され、マストが後傾し、マストとヘッドガード前部フレームとの間にはさまれ、前記災害を蒙ったものである。
原因
| (1) フォークリフトの積荷の崩れを直すため、運転席前部パネルに上る危険な作業を行ったことが、本災害の最大・直接の原因であるが、その背景として次の要因が考えられる。 | |
| [1] 被災者は、フォークリフト運転技能講習を受講していない無資格者であり、フォークリフトの構造、機能及び基本的な操作の要領等につき知識、技能に欠けていたこと。 [2] そのため被災者は、積荷の手直しに際しフォークリフトの荷をあげたまま、しかもエンジンを切らず運転席を離れるという安衛則第151条の11に定められた作業手順を完全に省略していたこと。 [3] A運輸の管理者も、フォークリフトに係る法規制を十分理解しておらず、無資格者の運転を容認しており、また、フォークリフトによる積卸し作業に関しての教育も行っていなかったこと。 | |
| (2) A運輸がB社製品輸送に使用するトラックは、災害時のものとほぼ同型のものを揃えており、通常パレットに積む高さは一定にしているが、段ボールの特性上、出来上ったばかりのものと数日保管されたものとでは高低差がかなりあり(13段積の場合1段程度の差)、災害時の荷は、出来上ったばかりのもので通常より高かったが、これを確認せず作業にかかったことも原因となっている。 | |
対策
(1) フォークリフトの運転資格者を充足すると共に、有資格者以外の者の就業を禁止する。(2) フォークリフトによる積卸し作業につき作業手順を明確にし、その徹底をはかる。
なお、作業手順には、特に災害原因となった積荷の高さの確認、荷の手直しの方法等を具体的に明示すること。
(3) パレットへの荷の積方については、使用するトラックの構造(荷台の形状寸法等)フォークリフトの能力・構造(バックレストの高さ等)荷の特性(段ボールの場合、新しいものと保管期間の長いものとの高低差等)を考慮し、また、荷主(この場合B社工場)と調整をはかりつつ適正に定めること。
厚生労働省