クレーンで吊り上げたPC板が落下し、下敷きとなる
業種 | セメント・同製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 30〜99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 飛来、落下 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | つり荷に触れ、下に入り又は近づく |
No.1052
発生状況
この災害は、ビルの外壁材として広く使用されているプレキャストコンクリートカーテンウォール(以下「PC板」という)を製造している工場で、作業のため吊り上げたPC板が落下したものである。当日の作業は、前日成型したPC板を型枠からはずす脱型作業を行う予定となっており、作業には工場の従業員であるAと、工場の下請けをしている会社の従業員であるBが担当することになった。
作業は、PC板(設計上の重量は、3.64トンであったが、災害発生後に実測したところ重量は5.75トンあった。)をつり上げ荷重7.6トンの床上操作式クレーンでつり上げて脱型した後、さらに1.5メートルつり上げてその下に入ってPC板に付着した目地ゴムを取り除く作業をしていた。
そのとき、アングルとPC板を結合していたボルトが抜けてPC板が落下し、下で作業をしていたAは全身がその下敷きとなってその場で死亡し、Bは腹部から足まで押しつぶされ、病院に収容されたがその日のうちに死亡した。
なお、工場の従業員Aが有していた資格はクレーン運転特別教育と玉掛技能講習のみであって、床上操作式クレーン運転技能講習は受講していなかった。また、下請け会社の従業員Bはクレーン関係の資格は全く有していなかった。
原因
この災害は、ビルの外壁材として広く使用されているプレキャストコンクリートカーテンウォール(以下「PC板」という)を製造している工場で、作業のため吊り上げたPC板が落下したものであるが、その原因としては次のことが考えられる。PC板の落下の直接の原因は、PC板の4隅に鋼製のインサート金具を挿入し、これにL型アングルを取り付け、このアングルの穴にワイヤロープをかけ、クレーンを用いて吊り上げている時にL型アングルを留めていたボルトがインサート金具から抜けたためである。
特に、4本のボルトのうち、2本はねじ山が欠けたり、ねじ山が損傷し全体に変形している。また、作業方法から見た原因としては、つり上げられているPC板の下に入って作業を行ったことが指摘される。
さらに、床上操作式クレーンの運転資格を有していない者に運転をさせたこと等があげられる。
対策
この災害は、ビルの外壁材として広く使用されているプレキャストコンクリートカーテンウォール(以下「PC板」という)を製造している工場で、作業のため吊り上げたPC板が落下したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。(1) 吊り上げ器具の改善等
PC板1枚ごとにボルトを4カ所着脱する方法は、ボルトを所定の深さまでねじ込むにも時間がかかり、また、十分なボルトの締め付けができない場合もあるので、つり上げ器具の改善等抜本的な見直しが必要である。
(2) 吊り上げ金具の点検整備
PC板1枚を搬送するたびにボルトの着脱が行われているためネジ山の摩耗が激しいので、定期或いは随時に点検を行う。
(3) 吊り荷の下への立ち入り禁止
つり上げたPC板の下で付着したゴムを取り除く作業等は絶対に行わないよう安全教育等を通じて徹底する。
(4) 品質管理の徹底
PC板の品質管理を十分に行うとともに、搬送等に先立って荷重計等で製品重量を計測する。
(5) 有資格者の確保
PC板の搬送に用いた床上操作式クレーンを運転する者として、床上操作式クレーン運転技能講習修了等の有資格者の確保を行う。