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労働災害事例

ゴルフ場で芝刈り機を移動中に運転席から転落し下敷となり死亡

ゴルフ場で芝刈り機を移動中に運転席から転落し下敷となり死亡
業種 ゴルフ場
事業場規模 1〜4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の一般動力機械
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物) 通路が確保されていない
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 合図、確認なしに車を動かす

No.100926

発生状況

 この災害は、芝生の整備などを実施していたゴルフ場で発生したものである。
 このゴルフ場では、約7か月後の開場を目指してコースの整備等を行っていた。作業体制は開場後に支配人となる開設準備室長(被災者)、管理課長、管理課次長、整備要員(全員女性)5名及び人材センターからの派遣作業員5名でコースの芝刈り等の作業を継続、実施していた。
 当日、整備要員および派遣作業員は、午前8時にゴルフ場に集合して管理課長を中心にミーティングを5分ほど行った。その後、それぞれに指示された場所に移動して乗用式芝刈機、刈払い機を使用して周辺の草及び芝刈りの作業を開始した。
 午前11時50分頃、整備要員の一人が8番ホールのカート道路のところで被災者から乗用式芝刈り機が燃料切れで動かなくなったことを知らされた。
 その後、被災者と言葉を交わしたこの要員は、昼食のため軽自動車の助手席に乗って詰所に戻ろうとした。この時被災者は8番ホールから9番ホールに至るS字カーブを下がり切った所に停止している乗用式芝刈機の前部にある刈取部の下で仰向けになって上半身を潜り込ませて刈刃部分の整備を行っていたようだった。以前にも同様の作業を目撃していたので要員はそのまま詰め所に戻った。
 午後0時25分頃、被災者がなかなか戻って来ないので管理課長は、当要員からそのときの被災者の状況を聞いて、0時40分頃軽自動車で9番ホールに行ってみた。するとティーグラウンド付近で上半身が刈取部の下敷きとなっている被災者を発見した。
 そこで、管理課長は、詰所にいた作業要員らを呼んで芝刈機を全員で持ち上げて意識がなくなっている被災者を救出し、救急車で病院に移送したが頚椎損傷等ですでに死亡していた。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 芝刈機を移動させていて運転席から転落したこと
 目撃者がいないため当時の状況が不明であるが、周辺の状況から次のように推定される。被災者は燃料切れになった芝刈り機をコース内の下りになっていたカート道路を利用して手で押しながら管理事務所近くまで移動させてきた。スピードが出てきたので途中で運転席に乗車したところS字カーブでスピードが出ていたため曲がりきれずに運転席から前の方に放り出され、そのときに頚部から地面に叩き付けられた。
2 芝刈り機の運転に習熟していなかったこと
 被災者はこの現場の総責任者であるが、日頃から手が空いたときには芝刈機を運転して作業を行っていた。
 しかし、この日運転していた芝刈り機は、1か月前に搬入されたグリーン整備専用の新車(質量453kg、速度は前進0〜13km/h、後進は0〜6.5km/h)だった。この車はコントロールペダルを爪先側に踏み込むと前進し、踵側に踏み込むと後進し、ペダルを離すと中立となる仕組みものであったが、その運転に十分習熟してはいなかった。
3 作業計画が明確に定められていなかったこと
 被災者は、ミーティングには出席しておらず事務所で書類の整理等を行ったのち、午前11時頃から草刈機を運転して作業に取り掛かったものと推定される。作業開始前にその日の作業計画、配置人員等についての計画を明確にすることなく作業を行わせていて、自分の作業計画も他の作業要員等に知らせていなかった。
 また、機械を運転する前にディーゼル燃料の残量、エンジン、ブレーキ等の機能確認等も行っていなかったと推定される。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 その日の作業計画を明確に示すこと
 完成したゴルフ場においては、コース整備のため乗用式の草刈機、土砂等の運搬用のトラック、整備要員用のトラック等が多く使用されている。河川敷のコースを除きコース内の道路およびグリーン周りにはかなりのアップダウンがあって、車両の運行中に転落等の災害が発生することが少なくない。
 作業責任者は、その日の作業開始前のミーティング等で、当日の作業場所、配置人員、使用機械等を含む作業計画および手順を全員に明確に示すことが大切である。作業に伴って想定される危険有害要因と事故の種類などについてもKY(危険予知)活動等により確認し、予防対策を指示する。
2 使用する機械の運転技能の向上を図ること
 ゴルフ場内を走行する乗用カート、乗用芝刈機等は、走行速度はそれほど速くはないが、走行道路の幅は狭く、起伏とカーブが多いところでは転倒しやすい特徴がある。これらの車両を使用して作業を実施する者に対してはあらかじめ十分な教育訓練を行うとともに、定期あるいは随時に運転実態を確認し、必要に応じて追加教育訓練を実施する。
3 作業者間の連携を密に行うこと
 ゴルフ場の整備作業等は、離れた場所で単独で行うことが少なくないので、あらかじめ作業者間の連絡のための無線機の携帯等について検討し、関係作業者に徹底する。
 また、各作業員は、同僚等の通常見慣れた作業行動等であっても相互に確認の声掛けを行うこと、管理者に報告すること等を習慣化する。