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労働災害事例

飼料貯蔵サイロ内で原料の除去作業中、崩壊し生き埋めとなる

飼料貯蔵サイロ内で原料の除去作業中、崩壊し生き埋めとなる
業種 港湾荷役業
事業場規模 1〜4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) その他の材料
災害の種類(事故の型) 崩壊、倒壊
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 防護・安全装置がない
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 安全装置をはずす、無効にする

No.100891

発生状況

 この災害は、飼料製造工場の貯蔵用サイロの原料除去作業中に発生したものである。
 災害発生当日の朝、港湾荷役会社に所属する被災者ら4名の作業員は、会社の事務所で飼料製造工場のサイロの中の固まった菜種油粕の取り崩し作業(フリッジ処理)を「気をつけて行うよう」作業課長から指示されて事務所を出発した。
 午前8時30分頃に作業場所に到着し、被災者と一人の同僚が一組、他の同僚が一組となってそれぞれのサイロで作業を開始した。
 被災者の組は、既に同じサイロで作業を行っており、前日に被災者が先にサイロに入ることが暗黙のうちに定まっていたので、到着後、被災者はハーネス型の安全帯、防じんマスク、頭巾を着用したのち電動ウインチのフックに安全帯のD環を掛け、同僚がウインチを操作して被災者をサイロの中に吊り入れた。
 同僚は、被災者が中に入って作業箇所に到達したことを確認したのち、菜種油粕の原料除去に使用する鍬(くわ)とショベルをロープで吊り下げて渡し、受け取った被災者は上から見て3段になっている最下段のところで命綱のD環を電動ウインチから外し、サイロの中央の穴に背を向ける形で原料を崩す作業に取り掛かった。
 午前9時20分頃、被災者が取り崩していた前面の2mの原料が突然崩れ落ち、被災者は崩れた原料に巻き込まれるようにサイロ下部へ流され、生き埋めになった。
 事故を知った同僚は、直ちにサイロの所有者である飼料協業組合に連絡し、駆けつけた他の同僚等と共同してサイロ下部のホッパー部から救出を試みたが救出に手間どり、被災者は窒息死した。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 作業計画が不明確なまま作業を行わせたこと
 被災者の所属する会社は、サイロに付着した菜種油粕の取り崩し作業を一定の時期ごとに受注してはいたが、その契約は口頭であり、作業の期間も作業が終了するまでという曖昧なものであった。
 会社は、サイロの指定と人員の配置を指示する程度で、具体的な作業計画を定めることなく実際の作業は作業者らにほとんど任せていた。
2崩壊危険のある場所の対策が不十分であったこと
 被災者がサイロ内に入ったときの油粕の堆積状況は、被災者が足場とした位置(サイロの上部から22mの位置)は幅が約3mで、そこから2m垂直に立ち上がり、2mの水平部分があってそこから2.4m垂直に立ち上がった階段状ではあったが、被災者が最初に2mの垂直部分を崩せば全体が崩壊する危険があったのに、電動ウインチのワイヤロープから命綱を取り外して作業を行っていた。
 なお、被災者が命綱を取り外した理由としては、D環をウインチのフックに掛けたままであると、頭にウインチのフックが当たること、屈んで作業をするときにフックが邪魔になること等があったと推定される。
3 安全教育が実施されていなかったこと
 サイロ内での作業は、付着物の崩壊による埋没危険のほか酸素欠乏危険もあったのに、採用後まもない被災者はもちろんのこと他の作業者に対して、これらの災害防止対策および作業手順等に関する安全衛生教育が行っていなかった。
4 安全管理が行われていなかったこと
 サイロ作業に関する会社の責任者は作業課長で、作業をしているときには、ほとんど毎日のように午前と午後の2回作業場所を巡回していたが、サイロの上部にあるマンホールから中の様子を見るか、サイロ上部にいる作業者と雑談をする程度であった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 あらかじめ作業計画を作成すること
 サイロ内に入って行う作業は、酸素欠乏危険と中に残存している原料等の崩壊による埋没のおそれがあるので、一連の作業の開始前にサイロ内の危険有害性を検討したうえで基本的な作業計画を作成するとともに、その日の作業開始前に危険予知と具体的な作業指示、災害防止措置の指示を行う。
2 埋没危険対策を検討すること
 原則として、ホッパー又はずりびんの内部その他土砂(飼料、肥料、鉱さい等)に埋没すること等により労働者に危険を及ぼすおそれがある場所では作業をさせてはならないが、やむを得ずそのような場所で作業を行わせる場合には、生き埋め等の危害を受けないようにサイロの上部から作業者が着用している安全帯を確実に保持できる親綱を垂らし、それに安全帯を確実に取り付けるとともに、作業位置の変更・変化に即応できるよう親綱の調整ができる措置を行う。
3 安全衛生教育を実施すること
 飼料の貯蔵等のために使用しているサイロ、倉庫等の内部は、酸素欠乏危険場所として指定(令別表第6の6号)されているので、あらかじめ関係作業者に特別教育(安衛法第59条第3項・安衛則第36条第26号・酸欠則第12条)を実施する。
 なお、新規に採用した者または作業内容を変更した者に対しては、基本的な安全衛生教育の中で作業手順、保護具の取扱方法、事故時の措置および退避の方法等について教育を行う。(安衛法第59条第1項・安衛則第35条第1項)
4 安全衛生管理を十分に行うこと
 事業場規模が小さい場合でも経営トップ自らあるいは一定の安全衛生に関する知識、経験を有するものの中から安全衛生担当者を指名し、作業手順の作成、安全衛生教育の実施、作業場所の巡視等の業務を行わせる。
 また、経営トップ自らも作業場所を定期あるいは随時に巡視し、作業実態の把握と労働災害防止に必要な指示を行う。