クリーニング工場の脱水機で首を切断される
業種 | クリーニング業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の一般動力機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100890
発生状況
この災害は、クリーニング工場の脱水工程で発生したものである。
被災者の所属する会社は、主として介護施設のオムツやホテルのシーツのクリーニングを行っている。 通常の作業工程は、リフトにより洗濯物を洗濯機に投入する⇒洗濯機により洗濯・すすぎをする⇒洗濯機から脱水機へ投入する⇒水圧脱水機により脱水をする⇒シャトルにより乾燥機へ搬送する⇒折りたたんで終了となっている。 災害発生当日の午前6時10分頃、専務が出勤して工場に行ったところ、水圧脱水機の傍らにおびただしい血が飛び散っており、被災者の身体が水圧脱水機の予備プレス脇のところに倒れていて、首が切断されて、水圧脱水機のバスケットの中にあるのを発見した。 被災者のタイムカードによれば、被災者は当日の午前5時42分に出勤していることから、出勤後に通常の手順に従って工場の電源を入れ、洗濯機および水圧脱水機の運転を開始していたものと推定され、現に専務が被災者を発見したときには洗濯機および水圧脱水機が稼動の状態にあった。 水圧脱水機は、ケース(幅180cm×長さ280cm×高さ130cm)の中に予備プレスと本プレスが納められていて、予備プレスでは空気圧により予備脱水と本プレスのための成型を行い、本プレスでは水圧により本脱水を行うようになっている。 予備プレスは、空気圧により加圧用のベル(蓋状の押さえ板)を下降させ、バスケット内の洗濯物を圧縮し、予備脱水と本プレス前の成型を同時に行い、空気圧は最大6.5kg/cm2 となっている。 本プレスでは、予備脱水の終了したテーブル上の洗濯物に質量約1tのベルが降下し、ベル内のゴム製のダイヤフラムを水圧で膨らませ、洗濯物を圧縮するもので、水圧は20.4kg/cm2 である。 |
原因
この災害の原因としては次のことが考えられる。 | |
1 | プレスの稼動中に予備プレスのバスケット内に身体を入れたこと
予備プレスのバスケットに洗濯物が送られると、約12秒後にベルが自動的に降下して13秒間加圧したのち上昇し、直ぐに第2回目の降下があって約2分間加圧することになっているが、最初に洗濯物が入れられたときに洗濯物が片寄ると手を入れて修正することがあり、12秒の間に被災者がその作業を行おうとしたのではないかと推定される。 |
2 | 予備プレスおよび本プレスの入っているケースの安全装置の機能が不完全であったこと
ケースには3箇所の両開きの扉(左扉を右扉が押さえる形のもの)があって、いずれも右扉にはインターロック用のスイッチが取り付けられており、スイッチのない左側の扉を開いたまま右扉を開いた場合にはインターロック機構が働かない構造になっているので、プレスの稼働状態でも身体をケース内に入れることができる。 なお、右扉には鍵も付いていたが、さび付いていて全く機能していなかった。 |
3 | 安全管理体制が不備で、安全管理が不十分であったこと
被災者は通常午前6時に出勤して1人で機械設備の電源を入れ、専務の出勤を待って2人で洗濯機および水圧脱水機の運転作業等を行うことになっていたが、洗濯機が全自動であったため、細かい点まで作業手順が定められていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。 | |
1 | 確実なインターロック機構に改造すること
この水圧脱水機のように、機械に身体の一部がはさまれるおそれのある機械については、扉が確実に閉じられていなければ機械本体が稼動しない機構の安全装置を備える必要がある。 特に、扉が2個あるものについては、それぞれの扉に安全装置を取り付けること、その場合でも片側の扉の安全装置が故障した場合は稼動しない機構とすること、扉を2個設けずに引き戸型のものとして安全装置を取り付けること等の安全機構が確実なものに改造する。 |
2 | 作業手順の確実な徹底を図ること
全自動方式の工程で作業を行っている場合であっても、検査、故障の修理、プレス加工品の不具合を修正するため、危険部分に接近する作業は避けられないので、安全装置等の設備の面から安全を確保することがまず重要であるが、あわせてこのような非定常作業の場合の手順をあらかじめ定めておき、関係作業者に徹底する。 なお、このような手順は慣れにより、あるいは忘却により省略することも少なくないので、定期に確認のため教育等を実施する。 |
3 | 安全管理体制を整備すること
全自動洗濯機による同種の災害が2年前から毎年発生しているので、メーカーなどから情報の提供を受け、その原因を詳細に検討し、災害防止対策を講ずる必要がある。 規模の小さな事業場であっても、一定の安全衛生知識と経験を有する者を安全衛生担当者として指名し、機械設備の点検要領の作成、安全衛生教育の実施、作業手順の作成、職場巡視等を行わせる。 また、毎日の出退時刻、作業開始・終了時刻、本作業開始前の準備作業等についても厳密に管理するとともに、作業者が自発的であっても危険な作業等を行わないよう徹底する。 |