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労働災害事例

工場の屋外特別高圧受電設備の改修工事中に感電

工場の屋外特別高圧受電設備の改修工事中に感電
業種 自動車・同付属品製造業
事業場規模 300~999人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 電力設備
災害の種類(事故の型) 感電
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100815

発生状況

 この災害は、自動車用鋳造部品等の製造工場の屋外特別高圧受電設備改修工事中に発生したものである。
 この工場は、特別高圧66,000Vで緊急用の予備受電を含め2回線の受電を行っている。送電会社で送電線各部の点検を行った結果、受電設備の断路器接続点で発熱が発見された。
 そこで、この回線の送電が停止される日を選んで、送電会社が発熱箇所を修理することになり、工場側の停電を確認し、発熱箇所を研磨して接触を良くすることになった。
 修理作業の2週間前に送電会社と工場の両者が工場の監視室に集まって作業の打合せを行なった。
 午前8時30分に2号回線から1号回線に切り替え、送電会社の給電所へループ切り替えの完了を報告した。
 午前9時10分頃、給電所から「固定設備を接地して下さい」との指令を受け、工場の電気係である被災者と同僚が接地操作棒で行うことになり、被災者が2回失敗して3回目で接地線の取り付けを終わり、その旨を給電所へ報告した。
 続いて、受電側のラインスイッチと遮断器の間も接地することになり、送電側が検電器で無電圧であることを確認し、被災者が受電用遮断器の架台に足を掛けて白相の傍をすり抜けて赤相部に移動し、仮置きしていた接地操作棒を取ろうとした時に、受電用遮断器赤相の碍子中央部に接触した。
 そのため、閃光とともに轟音が聴こえて被災者は架台から1.5m下に転落し、その後病院に移送されたが心肺機能停止でまもなく死亡した。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 充電範囲、停電範囲の確認を行わなかったこと
 この改修工事の打合せは2週間前に行われたが、送電会社から資産上の分岐点を定めた契約書と今回の工事箇所となる写真入の図面2枚だけで、配線図や回路図に基づいた充電範囲、停電範囲の確認を含む詳細な打合せは行われていなかった。
2 初めての者に接地線取り付け作業を行わせたこと
 被災者は、受電側の第2種電気事業主任技術者の資格を有する者ではあったが、電気取扱いに関する特別教育は修了していなかった。また、被災者と同僚2人とも今回の工事で行われた接地線の取り付け作業は初めての経験で、2回試みて失敗し3回目に取り付けることができた程度の技量しか有していなかった。
3 活線作業用装置等の準備を行わなかったこと
 断路器は屋外の高い場所にあって、しかも作業は活線近接作業で行われることが明らかであったが、活線作業用装置等をあらかじめ準備する等の措置を行っていなかった。
4 送電側と受電側の統括指揮が行われていなかったこと
 この改修工事は、資産上の分岐点をはさんで送電側と受電側の共同作業で行われたものである。送電側の作業を指揮した者は受電側設備の何処が停電で何処が活きているかの判別がつかず、統括指揮者が不在のまま作業が行われていた。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 共同作業の打合せを十分に行うこと
 分岐点をはさんで送電側と受電側が共同で作業を行う場合は、作業に先立って受電側の回路図等に基づいて充電部分、停電部分の確認を行うとともに、作業が活線近接作業として行われるのか否かを現場において確認する。
 とくに、工場等においては、一時的な停電も避けるため複数回線で受電し、ループ配電していることが少なくないので、関係設備の停電、充電の確認(安衛則第339条)は確実に行う。
2 活線近接作業は知識技能がある者に行わせること
 特別高圧の電路設備等の作業は、特別教育(安衛則第36条第4号)を受講した者に行わせる必要があるので、あらかじめの打合せおよび当日の作業開始前に有資格者の有無について確認する。
3 作業に必要な機器材の準備を行うこと
 特別高圧充電電路に近接して作業を行う場合には、活線作業用装置の使用、充電電路との接近限界距離の設定、監視人の配置等を行う必要があるので、あらかじめこれらの準備、選任等を行う。(安衛則第345条)
4 統括安全管理を行うこと
 特別高圧充電電路に近接して作業を行う場合には、作業者に対して作業の期間、作業内容ならびに取り扱う電路および近接する電路の系統について十分に周知するとともに、作業指揮者を選任して作業方法および順序を周知させ、作業を直接指揮させる。(安衛則第350条)
 なお、受電設備において送電側と受電側が共同で作業を行う場合には、統括指揮を行う者を特定し、その者の指揮の下に作業を行う。