インターロックを無効にして、照射中のエックス線透過試験装置内に手を入れて被ばく

業種 | 電子機器用・通信機器用部品製造業 | |||||
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事業場規模 | 100~299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 放射線 | |||||
災害の種類(事故の型) | 有害物等との接触 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100746
発生状況
この災害は、エックス線透過試験装置を使用してICチップを検査する作業中に発生したものである。エックス線透過試験装置は、最大管電圧が100kV、最大管電流が5mAであり、キャスター付きで移動することができるものである。
装置の前面には、上部右側にコントロールユニット、上部左側にCRTモニターユニット、下部には両開きの扉が取り付けられている。装置の内部には、上方にエックス線発生装置があり、下部に被検査物をセットするワークテーブルがある。前扉には、扉が開いている間はエックス線発生装置が作動できないようにインターロックスイッチ(ノーマルオープン型(a接点タイプ)スイッチ)が取り付けられている。また、装置内の被試験物を載せたワークテーブルを操作するリモコンスイッチが接続されている。また、ICチップは、シールに固定され、オープンリールに巻き取られている。
被災者らは、この装置によりICチップを検査する作業をしていたが、前扉を開けたまま、左手でインターロックスイッチを押さえ、ワークテーブル上を右手でICチップが巻かれているオープンリールを移動させていたため、右手にエックス線を被爆したものである。
原因
この災害はエックス線透過試験装置を使用してICチップを検査する作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | エックス線透過試験装置の扉を開けて、インターロックスイッチを押さえ、エックス線が照射中のワ-クテーブル上に手を入れて作業を行っていたこと。 なお、被災者らが受けた被ばく線量は、50Sv~100Svであったことが推定されている。 |
2 | ICチップが巻き取られたオープンリールを載せたワークテーブルの移動に微妙な操作を必要としたため、作業能率が上がらなかったこと。 |
3 | エックス線透過試験装置の扉に設けられたインターロック機構が容易に無効にすることができる構造であったこと。 |
4 | 被災者らは、エックス線障害に関する知識が十分でなかったこと。 |
5 | エックス線透過試験装置の使用が初めてであったことから、装置の操作に熟知していなかったこと。 |
6 | インターロック機構を無効にして作業が行われていた不安全行動が見過ごされていたこと。 |
対策
この災害は、エックス線透過試験装置を使用してICチップを検査する作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | エックス線透過試験装置の扉のインターロック機構は、ノーマルクローズ型(b接点タイプ)のスイッチを用いるなど扉を開けた状態で装置を人為的に作動させることができないようなフェールセーフ化を図る必要があること。 |
2 | インターロックを無効にすること、防護壁に加工を加えることなどの不安全行動は、エックス線による被ばくなど重大な事故が発生することを装置の見やすい位置に表示すること。 |
3 | いかなる場合であっても、扉を開けた状態で装置を作動させないなど作業手順を定めた装置の操作マニュアルを作成すること。 |
4 | 装置の構造および取扱いの方法、エックス線の生体に与える影響、およびその防止対策などについて教育を実施すること。 |
5 | 職制に応じた安全衛生管理の責任と権限を明確にし、安全装置を無効にするなどの作業員の不安全行動が見過ごされないような体制を構築すること。 |