炎天下での引越し作業中、熱射病に罹る
業種 | 一般貨物自動車運送業 | |||||
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事業場規模 | 16〜29人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | その他の環境等 | |||||
災害の種類(事故の型) | その他 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100739
発生状況
この災害は、高層住宅4階の住人から依頼を受けた引越しの作業中に発生したものである。災害が発生した日は、日中の気温が35℃に達する炎天下であった。この日、被災者は、職長ほか3名の作業員とともに、午前10時頃に引越しの依頼主宅へトラックの荷台に乗って到着した。依頼主宅へ到着後、職長から引越し作業の手順が指示され、引越し荷物の梱包および梱包された引越し荷物をトラックに積み込む作業を開始した。被災者は、引越しの作業はこの日が初めての経験であったため、職長から小物の梱包およびトラックへの積み込みを指示された。午後4時頃トラックへの引越し荷物の積み込みを終え、引っ越し先へ出発した。
午後4時30分頃に引越し先へ到着し4階にある依頼主宅へ引越し荷物の搬入作業を始めた。
搬入作業が一段落したところで休憩に入ったとき、トラック荷台上で物が倒れる音が聞こえたので同僚が荷台の方へ行って見たところ、被災者が荷台上で倒れていたので、トラック荷台から降ろして横に寝かせ、お茶を与えたところ、突然けいれんを起こし茶碗を振り落とす症状を見せたので、直ちに救急車により病院へ収容したが、熱射病により死亡したものである。
原因
この災害は、引越し荷物の梱包およびトラックへの積み降ろしする作業で発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 35℃に達する炎天下にさらされていたことから、体温調節機構の失調、体温または脳温の上昇を伴う中枢神経障害などを起こしたものと思われること。 |
2 | 炎天下で作業経験のない肉体労働である引越し作業を長時間にわたって従事していたことから、身体に過度の負担がかかっていたこと。 |
3 | 作業中に水分の補給は行われていたが、塩分の補給が十分に行われなかったこと。また、直射日光を避けるための帽子を着用していなかったこと。 |
4 | 熱射病に関する知識がなかったため、自らの身体の不調が熱射病によるものと気付かなかったこと。 |
5 | 職長をはじめ同僚の作業員たちが、熱射病に関する知識が十分でなかったため、応急措置や医師の診察を受けるなどの措置が不十分であったこと。 |
対策
この災害は、炎天下の引越し荷物の梱包およびトラックへの積み下ろしする作業で発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 気温条件、作業内容、労働者の健康状態等を考慮して、作業休止時間や休憩時間を確保すること。 |
2 | 作業場所にスポーツドリンクを備え付ける等水分や塩分が容易に補給できるようにすること。 |
3 | 服装は、熱を吸収、保熱しやすい服装は避け、吸湿性、通気性の良いものとし、通気性の良い帽子等を着用させること。 |
4 | 健康診断等の結果に基づき、適切な健康管理、適正配置等を行い、睡眠時間、栄養指導等日常の健康管理について指導を行うこと。 |
5 | 炎天下での作業に就く者に対して、熱中症の症状、熱中症の予防方法、緊急時の救急措置、熱中症の事例などについての教育を実施すること。 |
6 | 病院、診療所等の所在地、連絡先を把握するなど緊急連絡網をあらかじめ作成し、関係者に周知すること。 また、少しでも熱中症の症状が見られた場合は、救急措置として涼しいところで身体を冷し、水分および塩分の補給を行い、必要に応じ医師の手当を受けさせること。 |