職場のあんぜんサイト

  1. ホーム
  2. 労働災害事例
  3. 労働災害事例(検索結果詳細)

労働災害事例

船に積み込むスチールコイルの仮置場で下敷きになる

船に積み込むスチールコイルの仮置場で下敷きになる
業種 港湾荷役業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 荷姿の物
災害の種類(事故の型) はさまれ、巻き込まれ
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 区画、表示の欠陥
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) その他防護物をなくする

No.100673

発生状況

 この災害は、スチールコイルを船に積み込む準備作業中に発生したものである。
 災害発生当日は、岸壁に横付けされた韓国の貨物船に積んであったコンテナ15本を陸揚げした後、スチールコイル55個、ロードローラー1台、ボート3艘、コンテナ18本等を積み込み午後3時頃には出港する予定であった。
 そのため、午前7時30分までに当日の作業に従事する1グループ10名が現場事務所に集合し、事務所の外で体操を行ったのち被災者が運転するマイクロバスで岸壁に午前8時頃に到着した。
 到着後、デッキマンから被災者を含む岸壁作業員3名、船内作業員6名に対しそれぞれ注意事項の説明があり、午前8時5分頃からコンテナの陸揚げ作業が開始された。
 この作業は、船の揚貨装置を使用して午前8時40分頃までに終了し、続いて船に荷を積む作業に取り掛かり、まずコンテナのうち重い3個を積み、続いてスチールコイル55個を積むことになったが、デッキマンの指示で市営上屋(倉庫)に保管されていたものを岸壁の船の近くに運搬、仮置きすることになった。
 スチールコイルの運送は、会社の別の部門に所属するフォークリフト作業員2名で行い、午前9時頃には全てが運搬され、コイルが倒れないように木の角材を両側に当てて歯止めをした。
 午前9時20分頃、船にいたデッキマンが、2巻き目のコイルを船倉に降ろすため、揚貨装置装置の運転者に合図をして荷が着床したと思われる頃、岸壁で「ウッ」と言う声がした。
 岸壁で一緒に積み込みの準備作業をしていた被災者の兄もその声を聞いてその方向を見ると、仮置きしていたスチールコイルが倒れつつあったので、その場所に急いで行ったが、被災者は横向きでスチールコイルの下敷きになっていた。
 その後、救急車の手配をして20分ほどで救急車が到着し、病院に運ぶ間酸素吸入をし、到着後は心臓マッサージを続けたが、肝臓破裂、左肺破裂等により間もなく死亡した。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  スチールコイルを手で移動しようとしたこと
 倒れたコイルは、直径が135cm、幅15 cm、中心の空洞50 cm、質量約1.5tのもので、周囲はコイル保護のためフープ(幅19mm、厚さ0.9 mm)が巻かれていて、通常であればフォークリフトで運搬すべきものであるが、平らな地面であれば手で押しても動くことから被災者は作業能率を上げようと考え、歯止めを外したときにコイルが倒れその下敷きになったものと推定される。
2  作業分担が明確でなかったこと
 被災者は、玉掛技能講習を修了していて、当日もスチールコイルを船に積み込むための玉掛けを他の作業者とともに行ったりしているが、上屋から運搬して岸壁に仮置きしたコイルを岸壁の船の近くまで移動する方法・手順、仮置場の歯止めの取り外し等についての作業分担が明確に指示されていなかったため、被災者が独自の判断で運搬作業を行おうとしたものと推定される。
3  スチールコイルが不安定な状態で仮置きされていたこと
 岸壁のコンクリート床は一見平らに見えるが、細かい凸凹があり、コイル保護のためフープが巻かれたスチールコイルを立てて仮置きすることは歯止めを掛けていても危険な状態であった。
4  安全指示が不十分であったこと
 デッキマンは、その日の作業開始前に作業の内容の説明と重量物の取扱であるのでワイヤーロープの取扱についての注意を促してはいるが、作業全体の手順、役割分担と安全確保についての十分な指示は行っていなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1  作業開始前に作業手順、役割分担等を明確に指示すること
 その日の作業を開始する前に、全体の作業計画(作業の開始時刻、終了時刻、人員等)を作業者全員に周知するとともに、作業の手順、役割分担を明確に指示する。
 なお、荷を船へ積み降ろす場合には、総合指揮を行うデッキマンのほか岸壁で作業を行う者を指揮する者を指名し、その者に岸壁での作業の指揮を行わせることが望ましい。
 また、船内荷役作業者には労働安全衛生規則第451条の規定による職務を確実に遂行させる。
2  重量物の取扱の手順を定めること
 重量物の取扱においては、荷の激突、落下により身体に大きな傷害を与える危険があるので、その取扱について明確な手順を定め、関係作業者に周知徹底する。
3  重量物の仮置き方法を検討すること
 スチールコイル等の重量物で不安定なものを仮置きする場合には、不意の転倒、軽い接触による転倒等を防止するため十分に安定させることのできる歯止め等を準備するとともに、関係者以外の立ち入りを厳禁する。
 また、機械運搬を行うものと手作業を行うものを明確に区分し、作業者に周知徹底する。
4  安全衛生教育を十分に行うこと
 沿岸または港湾荷役作業においては、重量物の取扱、有害物の取扱等に伴う危険有害な作業が少なくないので、関係作業者に対して定期あるいは随時に安全衛生教育を実施する。
 また、教育訓練の一つとして、危険予知活動(KYT)、緊急時の連絡要領、応急処置の訓練等を取り入れる。