貸工場の天井走行クレーンの点検中に墜落

業種 | その他の金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 5~15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 建築物、構築物 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 故障未修理 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100666
発生状況
この災害は、貸工場の天井走行クレーンの点検中に発生したものである。この貸工場は建設機械の部品等のプレス加工等を行っている会社の所有物であるが、現在は中古のプレス機械等を販売している会社に倉庫として貸している。
災害発生当日、午前9時頃、借手から工場所有会社へ異常な音がする天井走行クレーンの補修の依頼があったので、午後0時40分頃、被災者は、社長から状況を確認するように指示を受け、同僚1名とともに約40m離れた工場に行った。
工場のランウェイには2台のガーダが載っており、入口に近いガーダには定格荷重3tの2基のホイストが設置されていたので、まず、被災者が東側のホイストのペンダントスイッチを入れてみたが特に異常音は出なかった。次に、西側のホイストのペンダントスイッチを操作したが、ホイストは動かなかったので、同僚に工場の北側にある配電盤のスイッチが投入されていることを確認させた後、被災者は、工場西側の壁面取り付け用のC型チャンネル(幅10cm)とH型鋼を足場にして床面から高さ6.7mのところにあるランウェイに登り、その上を横に約2m移動し、ガーダ上に身を乗り出すような姿勢でホイスト部にあるもう一つのスイッチを投入すると異常音がでた。修理は後日することにし、再びランウェイ上を移動してC型チャンネルに足を掛け降りようとした。
被災者と同じ方法で高さ約2.8mのところまで上っていた同僚は、一足先に床まで降りて扉のところまできたときに、背後から悲鳴が聞こえたので振り返って見ると、被災者が床に重ねてあった鋼材に頭から墜落し、倒れていたので、直ちに、救急車で病院に運んだが、間もなく頭部打撲、脳挫傷のため死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 昇降設備を使用せずに高所に昇降したこと 被災者が天井クレーンの電源を投入するために登ったガーダは、工場の床面から6.7mの高所にあったのに、はしごなどの昇降設備を使用せずに昇降して、降りる時に多分チャンネルから足を踏み外して墜落したものと推定される。 |
2 | 点検用の昇降設備が設置されていなかったこと この工場は現在貸倉庫として利用されているが、ときどき中古のプレス機械の移動等に天井クレーンを使用していることから、点検整備を行うためにランウェイ、ガーダ等の高所作業があるので安全に昇降する設備を設置しておく必要があったのに、設置されていなかった。 また、工場内には、移動用はしごも用意されていなかった。 |
3 | 専門家でない者に点検を命じたこと 被災者は、この会社に入社する以前に一時電気工事の作業にも従事していたが、クレーンの点検整備については必ずしも専門家ではないのに、社長は営繕担当ということで高所での点検作業を安易に命じた。 |
4 | 安全教育を実施していなかったこと この会社は小規模のところであり、高所作業に伴う危険とその防止対策等に関する安全教育は実施していなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 安全な昇降設備を設置すること 高さ又は深さが1.5m以上を超える箇所で作業を行うときは、作業に従事する労働者が安全に昇降するための設備を設ける。(安衛則第526条関連) なお、移動はしごを使用する場合には、丈夫な構造のもの、著しい損傷、腐食等がないもの、すべり止め装置が付いているもの等の要件を満たしたものを使用するとともに、昇降する場合には別に墜落防止のため安全帯等を使用させる。(安衛則第527条関連) |
2 | クレーンの点検整備は専門家に実施させること 天井クレーン等の点検整備においては、高所からの墜落危険のほか、併置されているクレーンとの激突危険、感電危険等が少なくないので、あらかじめ作業計画・手順を作成するとともに、外部の専門家等に点検整備を依頼する |
3 | 安全衛生教育を実施すること 墜落危険、感電危険のある場所で作業を行う者等に対しては、あらかじめ安全衛生教育を実施したうえで作業を命ずる。 また、労働者がこのような箇所で指示なく、あるいは安全な作業のための措置を行わずに実施することがないよう徹底する。 |