RC造ビル4階のコンクリート壁の解体作業中、作業者が倒壊した壁の下敷きとなる
業種 | その他の建設業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 仮設物、建築物、構築物等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 崩壊、倒壊 | |||||
建設業のみ | 工事の種類 | その他の建築工事 | ||||
災害の種類 | コンクリート擁壁、レンガ等の倒壊 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 省略行為 | |||||
発生要因(管理) | 機械、装置、工具、用具等の選択を誤まる |
No.100634
発生状況
この災害は、5階建ビル解体工事現場において、4階西側のコンクリ−ト外壁の解体作業を行っていたところ、コンクリ−ト壁が倒壊し、作業者が下敷きになったものである。災害発生当日、午後の作業再開後、元請の解体業者X社の作業員AおよびBは、西側外壁で上部および両側面が縁切りされている幅約2mの壁の上部の穴にワイヤロ−プを固定してから、建物の内部で東側方向に掛け、Aは、下請はつり業者作業員CとDにこの壁の外の足場側から4階床面と壁の交接部にエアチッパ−によって水平に切れ込みを入れるよう指示をした。
午後2時頃、Cは壁の解体で倒れやすくするために切れ込みの深さを深くすることと、Aの指示の内容と異なり、足場側からの外壁面への切れ込み作業より作業がやり易い4階床面上で壁内側面と床面との交接部に切り込みをいれることをDに対して指示し、CとDは、壁の両端から並んでそれぞれ作業を始めた。
CとDがこの作業を行っていたとき、解体中の壁がCとDのいる内側に倒れ、Cは逃げ遅れ、倒れたコンクリート壁に下半身を挟まれた。直ちに救出されたが、既に意識がなく死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | コンクリート壁が内側に倒壊する危険性があるにもかかわらず、壁の内側と床面の交接部付近でエアチッパ−によってはつり作業を行ったこと |
2 | 解体工事を行う前に、元請業者の作業者から、作業指示があったにも拘わらず、下請業者の作業員が作業を行いながら勝手に解体の作業内容を変更していたこと |
3 | 外壁面と床面との交接部に切れ込み作業を行うに際し、内側方向にワイヤロープの控えを設けているが、壁の倒壊防止対策としては不十分であったこと |
4 | 事業者が高さ5m以上のコンクリート造の工作物の解体作業を行うにもかかわらず、コンクリート造の工作物の解体等作業主任者を選任していなかったこと
したがって、作業主任者による作業の方法および労働者の配置の決定、作業の直接指揮を行なわれてなかったこと |
5 | 元請業者は、解体の作業計画を作成していなかったこと |
6 | 事業者は、作業者に対し解体作業における安全な作業方法の教育を行っていなかったこと |
対策
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。1 | 解体するコンクリート壁が一方に倒壊しないようにワイヤロープ等で支えを設けたうえで倒壊してこない側からはつり作業を行うこと |
2 | 解体工事を行う前に、十分な作業手順および作業の打ち合わせを行い、元請業者の社員の指示を守らせ、下請業者の作業員に勝手に解体の作業内容を変更させないこと |
3 | 元請業者は、解体工事において安全な解体工法を事前に十分検討し、解体計画を作成し、これを下請業者の作業員に周知させること |
4 | 高さ5m以上のコンクリート造の工作物の解体作業を行う場合は、コンクリート造の工作物の解体作業主任者を選任し、作業主任者に作業の方法および労働者の配置を決定させ、作業を直接指揮させること |
5 | 事業者は、作業者に対し、建設物の解体作業中の倒壊防止のため、使用する作業設備、作業方法等についての安全教育を徹底すること |
6 | 元請事業者は下請事業者を含む安全管理体制を確立し、現場の安全管理を徹底すること |