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労働災害事例

鋼橋上部工建設工事において、つり足場上で橋桁の塗装作業中、作業者が水中に墜落し溺死

鋼橋上部工建設工事において、つり足場上で橋桁の塗装作業中、作業者が水中に墜落し溺死
業種 橋梁建設工事業
事業場規模 30〜99人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 足場
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
建設業のみ 工事の種類 橋梁建設工事
災害の種類 溺れ
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 設計不良
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 保護具を使用していない

No.100606

発生状況

 この災害は、橋梁整備工事の上部工さび止めの塗装工事中に川に墜落し、水死したものである。
 工事は、長さ305.8m、幅15.3mの鋼橋建設工事で、すでに5基の橋脚は完成し、その上部工において、3次下請Z社が橋梁のさび止めの塗装工事を請け負っていた。橋桁の架設は、橋脚P1〜P3まで終了し、つり足場および安全ネットが設置され、橋の上部中央には手すり付の架設通路も設置されていた。しかし、P3橋脚から先は架設済の橋桁が4m程突き出ており、つり足場は、架設済みであったが、安全ネットは、未設置であった。
 災害発生当日、P3の先端部も含め橋桁のボルト接合部にさび止め塗料を塗る作業を行っていた。橋桁は、6本の主桁から構成されており、その間につり足場が上下2段に設置され、作業床の幅は50cmであった。
 作業は被災者が橋桁中央の上流側の桁面、同僚は下流側を分担しペアで実施していた。被災者は、災害直前、安全ネットが設置してあるP2付近で作業していたが、被災者の大声を聞いた同僚がネットの無いP3橋脚付近の水面上で被災者を発見した。被災者は、橋の先端部からつり足場に下りる時か、またはつり足場上で強風に煽られ、川に墜落、溺死したものと推定される。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  P3橋脚の先端部の場所での作業の実施が予定されていたが、この個所はつり足場のみで安全ネットが張られていなかったこと
2  被災者は、安全帯を使用していなかったこと
  この現場では、被災者も含め全員が安全帯を着用していた。また、安全帯の取り付け設備としては、主桁上には親綱が張ってあり、さらに主桁間には単管が配置されていたのでフックをかけることは可能であった。
3  昇降設備は、橋桁の下流側に3カ所あったが、配置位置が不適切であったこと
 作業者は、仮設通路からつり足場上へ単管等を伝って昇降が常態となっており、その際墜落した可能性がある。
4  当日は風が強かったこと
 被災者が移動中、強い風に煽られ、身体のバランスを崩したことが推測される。
5  救助の浮輪が墜落場所の近くに用意されていなかったため救助に間に合わなかったこと
 なお、浮輪は、仮設の工事機材保管室に1個用意されていたが、塗装工事の作業者にはその事を知らされておらず、役立てられなかった。

対策

 同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。
1  つり足場の作業床を隙間のないようにすること
 困難なときは、つり足場の下には安全ネットを隙間無く全面に張る。
2  高所での作業においては、事業者は、常に作業状況を監視し、安全帯の使用を徹底させ、不使用の場合には厳重に注意をすること
3  安全作業打ち合わせ等において、非常時を想定し、救助用の浮輪等の緊急救助設備を直ちに使用できる場所に設置するよう検討し、実施すること
4  使用しやすい場所に昇降設備を設置すること
 昇降設備の配置計画については、作業者の移動距離等を最短にするなど配置を充分に配慮し、また安全な昇降ができるような設備を設置する。
5  強風が予想されるときの高所作業は作業を中止すること
 とくに法規で定める風速以下であっても寒期は体感温度が低下するので不安全な作業行動に陥り易いことに配慮する必要がある。
6  元請事業者は下請事業者を含む安全管理体制を確立し、現場を定期的に巡視するなど安全管理を徹底すること