キュービクル型受変電設備で感電
業種 | ||||||
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事業場規模 | 300〜999人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 電力設備 | |||||
災害の種類(事故の型) | 感電 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 充電部分の防護なし、不十分 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100601
発生状況
この災害は、IC、LSI等を製造している工場のキュービクル型の受変電設備で発生したものである。この会社の電気事業主任技術者Aは第2種の免許状を持ち、嘱託として3年前から毎週1日、月に4日勤務している。
Aの業務の内容は、電気設備の保守点検と会社の職員である後任予定者B(組織上は上司)の教育訓練である。
災害発生当日、環境工務グループの朝礼が行われ、AはBと第1キュービクルの接地線の整理を行うことになり、午前中にその作業が終了した。
昼食後、Bは一人でクリーンルームの照明交換を、Aは専門家として独自の判断で一人作業を行っていた。1時間30分ほど経過したときに、作業者Cが第4キュービクルの前で全面の扉を開けて、内部の点検を行っているAを目撃している。
それから程なくして工場内が急に停電になったので、CがAに停電を知らせようとしてその場所に行くと、第4キュービクルの高圧側の扉が開いており、内部をのぞくとAがキュービクル内で、足を開放された扉のほうに、頭を変圧器の方に向けてうつ伏せになって倒れているのを発見した。
直ぐに事務所に連絡し駆けつけた者が救出して人工呼吸を施し、到着した救急車で病院に移送したが電撃による即死と判定された。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 当日の作業内容を具体的に定めていなかったこと 当日、朝礼は行われていたが、被災者が唯一の電気に関する有資格者であることから、その日に被災者らが実施する点検作業の内容およびその影響等について具体的な説明、指示等は行われていなかった。 |
2 | キュービクル内に立ち入るのに停電としなかったこと 電気に関する専門家である被災者が、高圧受変電設備であるキュービクル内の高圧充電部を開路することなくキュービクル内に立ち入った。 |
3 | 絶縁用保護具の着用などを行わなかったこと 高圧絶縁用保護具の着用、高圧絶縁用防具の使用をせずに、狭いキュービクル内の高圧充電部に接近した。 |
4 | 安全管理が適切に行われていなかったこと 被災者はそれまでにも漏洩電流の測定のためにキュービクル内に立ち入り接地線に触れたり、変圧器の過熱の状態を調べるために変圧器の放熱板に触れることがあったのに上司が注意等を行っていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 事業場として総合的に安全管理を行うこと 電気設備の取り扱いについて電気事業主任技術者などの専門家を配置することは当然であるが、その専門家が行う作業の安全も事業場の安全管理の重要事項として位置づけ、総合的、計画的に安全対策を進めることが重要である。 |
2 | 点検補修作業のマニュアルを策定すること 点検整備作業などの非定常作業については、マニュアルが策定されていないことが多いが、このような作業についても危害防止のために安全の急所を盛り込んだ作業マニュアルを策定し、関係作業者に周知徹底する。 |
3 | 作業指揮者を定めその職務を遂行させること 停電作業、高圧活線作業、高圧活線近接作業などを行う場合には、作業指揮者を選任し、作業者にあらかじめ作業の方法および順序を周知させ、かつ、作業を直接指揮することなどを行わせる。 |
4 | 安全教育を実施すること 高圧の充電電路、又は充電電路の支持物の敷設・点検・修理・操作の業務等に従事する者については、一定のカリキュラムによる特別教育を実施する。 また、絶縁用保護具、絶縁用防具等については、定期にその絶縁性能を検査するとともに、適正な使用方法について十分に教育訓練する。 |