天井クレーンでプレス機械の金型を移動させようとして感電
| 業種 | 機械(精密機械を除く)器具製造業 | |||||
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| 事業場規模 | 1〜4人 | |||||
| 機械設備・有害物質の種類(起因物) | クレーン | |||||
| 災害の種類(事故の型) | 感電 | |||||
| 被害者数 |
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| 発生要因(物) | ||||||
| 発生要因(人) | ||||||
| 発生要因(管理) | ||||||
No.100598
発生状況
この災害は、プレスの金型枠をつり上げた天井クレーンのワイヤロープを握った作業者が感電したものである。この会社は、主に動力プレスの金型の設計・製作・修理等を行っていて、作業者Aは製作した金型の試し打ち、調整の業務などを担当している。
災害発生当日、Aと同僚Bは発注先の工場に出向き、納品した金型を動力プレスに取り付けて試し打ちを行った。
加工物の出来が良くないので、プレスから金型を取り外し、天井クレーン(つり上げ荷重2.8t)で工場内の床の上に移動させた後、金型の上型から直径約40cmの円形の枠を取り外して、クレーンでつり上げた状態で午後の休憩時間となった。
2人は出張先の事務員から差し入れされた缶ジュースを飲み始めたが、Aは目の前につり下げられた枠が目ざわりになったので、移動させようとして枠を吊っていたワイヤーロープを右手で持ち、左手でペンダントスイッチを握った。
その途端、Aは「感電した」と叫び、両手をすり合わせるような動作をしながら2、3歩動いたが、その後、膝から崩れ落ちるようにうずくまり、うつぶせに倒れた。
Bは直ちに救急車の手配をして病院に移送したが、Aは約3時間後に死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。| 1 | クレーンのペンダントスイッチに漏電していたこと 被災者の手足などに電流斑など電撃の痕跡は認められなかったが、事故後に測定したペンダントスイッチとワイヤロープとの間の電圧は208Vであった。 また、ペンダントスイッチを分解したところ、スイッチの金属製外枠に止めてあったアース線のビスが外れていて、スイッチの充電部から金属製外枠に漏電していために、触れた時に電撃ショックを受けた。 |
| 2 | ペンダントスイッチに濡れた素手で触れたこと 電撃を受ける前の金型の取り外し作業などでは軍手をしていたので電撃を受けなかったが、感電した時点では軍手を脱ぎ缶ジュースを開けて飲んでいたことから、缶の周囲の結露や汗により手が湿った状態であったため電撃を受けたものと推定される。 |
| 3 | ペンダントスイッチの点検・補修が不十分であったこと この天井クレーンについては、年次、月例、作業開始前の検査・点検は行われていなかった。また、約6月前にはスイッチが入らなくなったため、個人経営の電気屋に依頼して修理を行ったが、このような異常がない限り定期あるいは随時に検査・点検、補修が行われていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。| 1 | クレーンのペンダントスイッチは、クレーンの操作をしていない時に付近の柱に当たり損傷することもあるで、法令に定める期間よりも頻繁に点検・補修を実施すること |
| 2 | クレーンを使用する作業においては、つり上げ用ワイヤロープへの漏電、ペンダントスイッチのケースへの漏電などによる感電を防止するための対策、作業開始前点検などについて関係作業者に対して安全教育を実施すること 特に、出張先のクレーンについては、点検・補修などの状況が不明なことが多いので、クレーンの管理者による運転を要請するか、自ら点検実施の有無を確認のうえ操作するような習慣づけについて教育する必要がある。 なお、クレーンの操作作業などにおいては、電撃防止とともに手指の保護のためにも手袋(できれば電気的に絶縁効力のある)の使用を徹底することが望ましい。 |
| 3 | 樹脂製のペンダントスイッチの採用などを検討すること この災害のようにスイッチ内部のビスの脱落などの不具合による漏電を防止するためには、外枠が樹脂製など絶縁効力が優れたものでできているスイッチの採用も検討する必要がある。 |
厚生労働省