工場内の天井クレーンで鉄筋の運搬中、隣の鉄筋の束が崩れ下敷となる
業種 | 製鉄・製鋼・圧延業 | |||||
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事業場規模 | 100〜299人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 崩壊、倒壊 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100586
発生状況
この災害は、鉄筋コンクリート用の棒鋼を製造している工場で発生したものである。この工場では、スクラップヤードで原料の鉄の配合を行い、製鋼ヤードで溶解、鋳造後、圧延ヤードで丸棒に伸ばして冷却し、製品ヤードで丸棒を切断、結束して出荷する手順で作業が行われているが、被災者は製品ヤードでの製品の出荷班に所属していた。
災害発生当日の午前中は、7名の班員で結束された鉄筋の束に種類別プレートの取り付け作業を行い、午後はそれぞれに分かれて出荷の作業に従事した。
被災者は、班長と一緒につり上げ荷重10.2tのクラブトロリ式天井クレーンを使用して待機しているトレーラーに積み込む作業を行うことになり、クレーンの運転は班長が行い、玉掛けは被災者が、玉外しはトレーラーの運転手が担当し、4段に積まれた13束(最下段のみ4列)の鉄筋を3束づつ積み込んでいた。
上から3段目の3束に玉掛けして班長がクレーンで移動中に、「ガサッ」という音がしたのでその方向を見ると、出荷中の製品の「はい」の隣に8段(高さ約2m)に積み上げてあった鉄筋束の上から5段目までが崩壊しており、崩壊した鉄筋と隣の鉄筋の「はい」の間に挟まれている被災者を発見した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 湾曲防止のための台木が破壊したこと 製品ヤードでは、短い寸法の束の上に長い寸法の物が積まれていることも多く、その場合には上の鉄筋束の湾曲を防止するために台木を挟んでいたが、崩壊した「はい」の台木は重量に耐え切れずに破壊していたので、これが「はい」の崩壊の端緒になったと考えられる。 |
2 | 鉄筋束の「はい」の崩壊防止措置がなされていなかったこと この工場で生産される製品の寸法は太さ、長さが種々であったが、出荷前の「はい」状況は種類別に区分されたものではなく、雑然と積み上げられていたのに「はい」の崩壊防止の措置がなされていなかった。 |
3 | はい作業主任者が選任されていなかったこと この工場では「はい」の高さが2mを超えるものがあったが、作業主任者を選任せずに作業が進められており、また、作業開始前に役割分担などについて指示する者もおらず、習慣的にペアを組んで作業を行っていた。 |
4 | 安全教育が実施されていなかったこと この工場では、はい付け、はい崩しの際の危害防止についての安全教育が実施されていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 製品の「はい」は種類別に区分し、「くい止め」など崩壊防止の措置を行うこと 直径、長さが異なる鉄筋束を同じ「はい」に積み上げることは危険であり、同じ種類の「はい」とすることが重要である。なお、「はい」と「はい」との間隔も十分に取り、荷をクレーでつり上げた時に隣の「はい」に接触するおそれがないような間隔を保つことが望ましい。 |
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2 | 高さが2mを超える「はい」のはい付け、はい崩し作業を行う場合には、「はい作業主任者技能講習」を修了した作業主任者を選任してその職務を履行させること 作業主任者には、次のような職務を行わせなければならない。 |
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(1)
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作業の方法、順序を決定し、作業を直接指揮すること
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(2)
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器具及び工具を点検し、不良品を取り除くこと | |
(3)
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作業を行う場所を通行する労働者の安全を確保するための指示を行うこと | |
(4)
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はい崩しの作業を行う場合は、崩壊の危険が無いことを確認した後に作業の着手を指示すること | |
(5)
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1.5m以上の「はい」に昇降する場合には、昇降設備および保護帽の使用状況を監視すること | |
3 | はい付け、はい崩し作業に従事する労働者に対しては、あらかじめ作業要領・手順、危害防止の措置などについて安全教育を実施すること |