住宅建築現場で移動はしごで、ペンキのふき取り作業中転落
業種 | 金属製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 1〜4人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | はしご等 | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | ||||||
発生要因(人) | ||||||
発生要因(管理) |
No.100572
発生状況
この災害は、住宅建築工事において移動はしごから転落したものである。この会社では、建築用鉄骨の製作を行っており、製品の取り付け工事のほとんどは鳶職専門の会社に発注しているが、一部自ら実施することもあり、今回も住宅の2階への外部階段、踊り場および手すりの製作を受注し、その取り付け工事を行っていた。
災害発生当日、被災者は、社長および同僚の3人で前日に引き続いて現場に赴き、午前中の休憩前に2階踊り場の床面の設置が終了した。しかし、前日に外部階段にさび止め塗装を行ったときに塗料が1階玄関の「ひさし」の上に垂れたのを、休憩時間中に拭きとることとし、被災者が担当することになった。
移動はしごを玄関先の土盛り(階段設置予定であったが未着手であった)のところに立て掛け、およそ170cm ほど上ったところでシンナーを含ませたウェスで「ひさし」の上の塗料の拭きとりを行っていたところ、はしごの脚部が後方に滑動し、被災者はあお向けの状態で、足、腰、頭の順でアスファルト舗装の上に転落した。
被災者は、保護帽を着用していなかったため、後頭部を強打し、8日後に脳挫傷により死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 | はしごの設置場所の地面が傾斜していたこと はしごを設置した場所は、玄関前に階段を設置する予定の場所で階段状に土盛りされた状態のままであったため、はしごに乗ったことにより重量がかかって後方に滑動したものと推定される。 |
2 | はしごの転位を防止する措置を行っていなかったこと 移動はしごの脚部には接地面の確保ができるように可動式金具が取り付けられており、また、その底にはゴムが張られていたが、設置地面の状態が不安定ではしごの転位を防止する措置としては不十分であった。 |
3 | 保護帽を着用していなかったこと 被災者が作業を行っていた場所は2メートル未満と比較的低い場所であったが、保護帽を着用していなかったために、後頭部を強打し致命的な傷害を受けたものである。 |
4 | 作業の監視を行っていなかったこと 工事現場には社長も来ていたが、住宅の建築途中のため不安定な場所で移動はしごを使用する作業なのに安全に関する特段の注意もせず、また、作業を監視することもしていなかった。 |
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 高所での作業に移動はしごを使用する場合には、設置場所の安定性などを確認すること 住宅建設工事などにおいては短時間の作業に移動はしごなどを使用することが少なくないが、その場合には設置場所の強度、安定性などについてあらかじめ点検し、必要に応じて敷板などを使用することが望ましい。 なお、短時間の作業であっても墜落防止装置付きの移動足場を使用することが望ましい。 |
2 | 移動はしごの転位防止を確実に行うこと やむを得ず移動はしごを使用する場合には、丈夫な構造、著しい損傷のないもの、幅は30cm以上のものを用い、ロープで建築物を固定するなどの転位防止措置を講ずる。 |
3 | 保護帽の着用などを行わせること 高所で作業を行わせる場合には、その高さにかかわらず転落防止のための安全帯の使用、保護帽の着用を励行させる。 |
4 | 作業の監視などを行うこと 高所での作業については、短時間の作業であっても安全な作業手順の検討を行うとともに、作業の監視を行うことが望ましい。 作業者に対しては、墜落・転落防止についての安全教育を実施する必要がある。 |