地盤改良作業で掘削部分から溢れ出る排液の回収作業中に、ロッドに巻き込まれる
| 業種 | 土木工事業 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 事業場規模 | 30〜99人 | |||||
| 機械設備・有害物質の種類(起因物) | 基礎工事用機械 | |||||
| 災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
| 建設業のみ | 工事の種類 | 鉄道軌道建設工事 | ||||
| 災害の種類 | くい打機、くい抜機、ボーリングマシン等 | |||||
| 被害者数 |
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| 発生要因(物) | ||||||
| 発生要因(人) | ||||||
| 発生要因(管理) | ||||||
No.100530
発生状況
この災害は、新幹線のトンネル付近の地盤改良工事において発生したものである。工事は、リースした3台の地盤改良機を使用して新幹線のトンネルから出たところの線路内に地盤改良のための杭を打設するものであった。
作業手順としては、地盤改良機の減速機の軸に中空軸のロッドをピンで接続し、あらかじめ地面に挿入してある「さや管」の中を、リーダーに沿って動力部を降ろしながらロッドを回転させて先端部のビットで掘削した後、先端から薬液を注入して地盤を改良するものである。
この工事の時間帯は深夜に限定されているが、災害発生当日、被災者は回転しているロッドから数10cm離れたところで、掘削と薬液注入に伴って掘削部から溢れ出てくる排液と混じった排土をスコップでバケツに回収する作業に従事していた。
午前1時頃、3号機において地盤改良機の減速機とロッドの接続部が回転しながら約1mの高さまで下がってきた時に、ロッドの接続部に8cm飛び出ていた太さ8mmの鋼製の接続ピンが被災者の着衣の左肩付近に引っかかり、着衣とともに被災者の上半身が地盤改良機のリーダーとロッドとの間に巻き込まれ、頸椎骨折で死亡した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。| 1 | 減速機の軸とロッドを接続するピンが埋頭(まいとう)型でなかったこと 減速機の軸とロッドを接続するピンは、当初埋頭(まいとう)型のものであったが、作業能率を重視して、工事の途中からボルト型のものに取り替えられていたため、これに着衣が巻き込まれたものである。 |
| 2 | 地盤改良機の死角で作業を行っていたこと 被災者は、回転軸に対して少しずつ右回りしながら作業を行っていたため、被災時には地盤改良機の運転者からは見えない位置になっていて、災害が発生したことも知らずに作業を続けていた。 |
| 3 | 立入禁止措置を行っていなかったこと 回転軸にごく接近して排土の除去作業を行わせることは、もともと危険な作業であったが、作業効率を重視して立入禁止の措置をせず、また、誘導員の配置もしていなかった。 |
対策
同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。| 1 | 回転軸の接続ピンには埋頭(まいとう)型のものを使用すること 作業装置の回転軸とロッドを接続するピンであって、接近した箇所での作業が予定されている場合には必ず正規の埋頭(まいとう)型のものを使用することが必要である。 なお、やむを得ずロッドの外側に飛び出るような長いピンを使用する場合には、ピン突出部に覆いを取りつけ、巻き込まれるおそれがないものとする必要がある。 |
| 2 | 作業方法の変更を行うこと 回転している機械あるいはその軸に接近して作業を行うことは危険であり、この作業のように排土を除去する場合でも、流出した排土を一定の距離まで誘導する樋を設けるなど作業方法を変更することが必要である。 また、やむを得ず見通せない位置で作業をさせる場合には、必ず誘導員を配置する必要がある。 |
| 3 | 安全教育を徹底すること 関係する作業に従事する全ての者に対して、作業開始前に十分な安全教育を実施することが重要である。 また、作業中に危険を認識した場合には、直ちに作業を中断すること、あるいは生産性がある程度低下しても安全な作業方法に変更することなど安全管理を徹底することも必要である。 |
厚生労働省