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労働災害事例

下水道管敷設工事で溝内で作業中、土止め支保工が倒壊

下水道管敷設工事で溝内で作業中、土止め支保工が倒壊
業種 上下水道工事業
事業場規模 1〜4人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 地山、岩石
災害の種類(事故の型) はさまれ、巻き込まれ
建設業のみ 工事の種類 上下水道工事
災害の種類 土砂崩壊
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:1人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.100522

発生状況

 この災害は、下水道管敷設工事において掘削溝内部で埋設管の接続作業中に発生したものである。
 この工事は、全長約240mの下水道管を4m単位で埋設していくもので、そのためにドラグショベルで長さ約4.5m、幅90cm、深さ3.8mの溝を掘削し、溝の両側に長さ4mの軽量鋼矢板(こうやいた)の土止め支保工を押し込み、3段に切梁(きりばり)を取付ける工程で作業を進めていた。
 災害発生当日、被災者と同僚の2人は、朝から当日の掘削作業場所で、まず掘削の作業と土止め支保工の取付け作業などを行い、午後になって掘削した箇所の溝内において前日に埋設した管と当日に埋設した管を接続する作業を行っていた。
 ところが、その作業中に突然に鋼矢板(こうやいた)で土止めした背面の土砂が沈下したため、軽量鋼矢板(こうやいた)の切梁(きりばり)(パイプサポート)が外れ、土止め支保工がマッチ箱が押しつぶされるように崩れて矢板の底部が急速にせばまった。
 そのため、作業者2名がこの押し潰された土止め支保工にはさまれ、1名が死亡し、1名が負傷した。
 なお、被災した場所と反対側の溝には、バックホーのアームが差し込まれていたため、鋼矢板(こうやいた)が支えられる形となり、矢板(やいた)の倒壊は生じなかった。

原因

 この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1  土止め用鋼矢板(こうやいた)の根入(ねい)れが不十分であったこと
 発注者の設計では、土止め用の鋼矢板(こうやいた)の根入(ねい)れ深さが20cmとなっていたが、3.8mの掘削深さに対して4mの鋼矢板(こうやいた)では根入(ねい)れの深さが不十分であった。
 また、砂地盤で地下水位が高かったため、掘削底面に軽度なボイリングのような現象が発生し、溝の底部付近が不安定となっていたことも原因の一つとなっていた。
2  設計図と異なる土止め方法であったこと
 発注者による土止め支保工の設計では、矢板(やいた)を重ねて設置したものとして計算されていたが、この方法による場合にはバイブロハンマーが必要となるので、実際には重ねずにバックホーで離したまま押込む方法を採っていた。
3  地山の掘削作業主任者が職務を履行していなかったこと
 工事現場の作業は、3次下請けが実施していたが、この事業場では地山の掘削作業主任者は居らず、現場の元方事業者には有資格者が居たが、災害発生の1時間ほど前に巡視したのみで現場を離れ、作業主任者としての職務は履行していなかった。

対策

 同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。
1  土止め支保工の計画を適正に行うこと
 掘削した溝の土止めに使用する鋼矢板(こうやいた)の寸法は、土質などを調査したうえで、十分な根入(ねい)れ長さが確保出来るような長さのものを使用し、また、切梁(きりばり)などについても十分な強度が得られるよう設計段階で十分に検討することが必要である。また、溝内での作業手順についても十分に検討する必要がある。
2  工法に合った建設機械を使用すること
 土止めに使用する鋼矢板(こうやいた)の設置要領がかみ合せ方法である場合には、当然にバイブロハンマーを用いて作業を行うべきであり、溝掘削に使用するバックホー等を安易に転用することは避けなければならない。
3  作業主任者がその職務を確実に履行すること
 地山の掘削作業主任者は、現場に常駐して次のような職務を確実に履行することが必要である。
[1]  作業の方法を決定し、作業を直接指揮すること
[2]  器具および工具を点検し、不良品を取り除くこと
[3]  安全帯および保護帽の使用状況を監視すること
 なお、下請の事業者は、地山の掘削作業主任者を養成し、現場に配置する必要がある。