エレベーターの点検作業中、カウンターウェイトにはさまれる
業種 | その他 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | エレベータ、リフト | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100473
発生状況
この災害は、エレベーターの搬器の上に乗り、エレベーターの点検作業中に発生したものである。災害が発生した日、被災者と補助者の2人は、テナントビルの9階エレベーターホールから8号機に乗り込み、各階のドアの開閉状態を確認しながら1階まで降りた。被災者は1階で下り、補助者は搬器に乗ったまま地下1階まで搬器を下ろし、搬器内の運転盤の施錠をはずして、「停止」、「保守」、「一斉点検」にスイッチを切り替えた。被災者は、補助者の搬器内の運転盤スイッチ切替の合図を受け、搬器の上のスイッチを「停止」、「オンゲージ」に切り替えて搬器の上に乗り移った。補助者が8号機の搬器の上に乗り込み、搬器の上の入口側にいた被災者は吹き抜け側に移動して、搬器の上の各機器の点検の作業を始めた。
これらの点検作業がほぼ終了したときに、被災者は搬器の上に設置されているクーラーの7号機側に面して取り付けられているフィルターをはずそうとしていた。このとき、補助者は、後ろで被災者のうめき声を聞いたので振り返ったところ、隣接の7号機のカウンターウェイトとガイドレール支持枠の水平材との間に被災者が右足を引きずり込まれた状態であった。
原因
この災害は、エレベーターの搬器の上に乗り、エレベーターを点検する作業中に発生したものであるが、その原因としては、次のようなことが考えられる。1 | 隣接のエレベーターが運転状態であったこと 搬器の上のクーラーのフィルターを止めている蝶ネジを取りはずすときに、ガイドレール支持枠に乗り移ったため、自動運転中の隣接のエレベーターの降りてきたカウンターウェイトとガイドレール支持枠に右足を引き込まれた。 |
2 | 不自然な姿勢を強いられる位置にクーラーが設置されていたこと クーラーは搬器の端部に近い位置に取り付けられ、エアーフィルターが搬器の端部側に蝶ネジで固定されていたため、狭隘な搬器の上より作業のし易いガイドレール支持枠に乗り移って、作業を行った。 |
3 | 作業の標準化が十分でなかったこと 運転中のエレベーターに隣接するエレベーターの点検作業を行う場合における作業の安全を確保するための作業手順が整備されていなかったため、作業者の経験に基づいた判断に委ねられて作業が行われていた。 |
4 | エレベーターの点検作業におけるはさまれ、墜落などの危険およびその対応策などについての教育が十分に行われていなかったこと |
5 | 組織的に安全管理体制が確立されていなくて、安全管理が不十分であったこと |
対策
この災害は、エレベーター搬器上での定期点検作業中に発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 | 搬器上での点検作業性を考慮した機器類の配置を検討する必要があること また、搬器上に手すりを設けることが困難であるときは、組立式又は折りたたみ式などの手すりを制作し、搬器上に持ち込んで使用できる構造のものを準備すること |
2 | 点検を実施するエレベーターに隣接するエレベーターの運転を休止して、作業を行うように徹底すること |
3 | 隣接するエレベーターの運転休止、搬器の上の囲いの設置など作業の安全を確保するための作業手順を作成し、周知徹底すること |
4 | 作業手順の整備およびその遵守状況の管理を組織的に行う体制を充実するなど職制に応じた安全管理の役割と責任を明確にするなど体制の見直しを行うこと |
5 | 点検作業員に対し、可動部との接触による危険、搬器上からの墜落の危険性など点検作業時に生ずる危険性についての知識を付与するとともに、これらの危険性に対する措置についての安全教育を実施すること また、監督者に対し、監督者としての必要な知識および技能について安全教育を実施すること |