天井クレーンの点検中、墜落
業種 | 鋳物業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 安全帯を備え付けていない | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 保護具を使用していない |
No.100431
発生状況
この災害は、鋳物工場において、天井クレーンガーダ上で点検作業中の作業者が墜落したものである。災害発生当日の朝、被災者は、社長と当日に行う鋳物の造型方法、納期、工程等の打ち合わせを行った後、鋳型に溶銑を注入する作業を開始したが、使用している天井クレーン(吊り上げ荷重2.8t) のクラブトロリを動かすチェーンがいつもより重いことに気がついた。
被災者は、注湯作業が終わったところで、クレーンを点検することにして、クレーンガーダ(地上4.7m、幅15cm)まで登って跨がり、サドルに足を掛けた状態で手動式クラブトロリの点検を始めた。
この時、被災者は安全帽を着用せず、安全帯も使用していなかった。
被災者は作業途中、同僚にハンマーを持ってくるように頼んだ。同僚はハンマーを被災者の乗っているクレーンガーダの反対側の横にある点検通路から手渡して作業を見ていた。
しばらくの間、被災者は不具合箇所の点検を続けていたが、原因がわからないので降りると言ったので、同僚は向きを変えて降りようとしたとき、背後で被災者の声がしたので振り向くと、墜落する被災者の姿が見えた。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 墜落防止のための措置を行っていなかったこと
被災者は、作業を中止し地上に降りようと立ち上がった時、バランスを崩して墜落したものであるが、狭いガーダー上での作業であったのに、安全帯を使用する等の墜落防止のための措置を行っていなかった。また、安全帯の準備もなされていなかった。
2 知識のない機械の点検を行ったこと
被災者は、注湯作業については長い経験を持っていたが、クレーン等の機械についての知識は十分でないのに、高い場所での点検を行ったものである。
3 機械の修理等の作業についての手配要領が決められていなかったこと
クレーンは、設置以来、特に定期点検等を実施していなかった。
また、これらの機械の故障時の手配要領等は定められていなかったので、被災者は自分の判断で高所に上ったものである。
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 機械等の点検・修理は専門家に依頼すること
機械等についての知識を有していない者が、墜落危険のある高所に点検・修理のため昇るようなことは厳禁し、専門業者に依頼するような手配要領について作業員に徹底しておくことが必要である。
2 墜落防止措置を行うこと
軽微な故障で修理が誰でも可能と思われる場合であっても、高所で作業を行う時には安全帯の使用等の墜落防止措置を行わせることが必要である。
3 クレーンの使用前点検等を実施すること
クレーン等については、定期に専門業者に依頼して点検整備を行うとともに、その日の作業を開始する前に機能に不具合な部分がないかを点検し、異常があるときには使用を禁止するよう徹底することが必要である。
4 安全教育を実施すること
作業員に対しては、まず、基本的な安全教育を実施し、独断で危険な作業を行わないよう徹底することが必要である。