産業用ロボットの可動範囲内に立ち入り、マニプレータに挟まれる
業種 | ガラス・同製品製造業 | |||||
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事業場規模 | 1000人以上 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 産業用ロボット | |||||
災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 設計不良 | |||||
発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 |
No.100422
発生状況
この災害は、受像用ブラウン管パネル製造工場において、製造ラインのコンベヤ内にあったパネル破片を取り除く作業中、産業用ロボットのマニプレータに作業者が挟まれたものである。災害発生当日、被災者は、夜勤に従事し、ラインの監視を主な業務としていた。
ブラウン管のパネル(ブラウン管のフェース部)の製造ラインは、ワークショップ内に約50mの長さで4ラインがほぼ並列に設置されていて、ラインコンベアには4m間隔で産業用ロボットが配置されている。また、ラインコンベヤには1か所減速機が設けられている。
被災者は、監視中に減速機がある場所のコンベア内にパネル破片があることを発見したので、コンベアに接近し、破片を取り除いていたところ、稼動中の産業用ロボットのマニプレータと減速機の間に頭部をはさまれ死亡した。
なお、この産業用ロボットは、マニプレータに吸着器を有し、パネルを把持してライン上をX軸(ラインを横切る方向)Y軸(ラインの流れ方向)およびZ軸(上下方向)に可動する直交座標型の搬送用のものであった。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 産業用ロボットの運転を停止しないで、産業用ロボットのマニプレータ移動の間隙をぬって可動範囲内にあるラインコンベヤ内のパネル破片を手で取り除いていたこと
2 稼動中の産業用ロボットのマニプレータとの接触を防止するための安全柵、囲い等が設けられていなかったこと
また、可動範囲内に立ち入る場合に、産業用ロボットの駆動源が遮断される安全マット等もなく、運転中に可動範囲内に立ち入ることを禁止する措置もとられていなかったこと
3 異常時に産業用ロボットの運転が緊急停止できる非常停止スイッチ等の操作が容易に行えるような位置にはなかったこと
4 運転中の産業用ロボットの可動範囲内に立ち入る場合の作業手順の作成、安全教育の実施等がされていなかったこと
また、保護帽が着用されていなかったこと
5 夜勤における1人作業の安全管理が不十分であったこと
対策
同種災害防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 運転中の産業ロボットの稼動範囲内に立ち入る場合には、運転を停止するとともに、駆動スイッチ等が他の者によって操作されないようにすること
2 産業用ロボットの可動範囲の外に、産業用ロボットのマニプレータ等との接触を防止するための安全囲い等を設置すること
3 運転中の産業ロボットの可動範囲内に立ち入る場合には、入口に駆動源を遮断できる安全マットの敷設等を行うこと
4 異常時に、直ちに産業用ロボットの運転を停止できるように非常停止スイッチの設置、監視カメラの設置等を行うこと
5 運転中の産業用ロボットの可動範囲内に立ち入って作業を行う場合の作業規程の作成などを行い産業用ロボットの不意の作動による危険を防止するための教育を行うこと
6 安全管理体制を確立し、安全管理を徹底すること
特に、夜間の1人作業について、留意する必要がある。