クレーンの点検作業中に、走行してきたクレーンにはさまれる
| 業種 | その他の製造業 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 事業場規模 | 5〜15人 | |||||
| 機械設備・有害物質の種類(起因物) | クレーン | |||||
| 災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
| 被害者数 |
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| 発生要因(物) | 設計不良 | |||||
| 発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
| 発生要因(管理) | 危険場所に近づく | |||||
No.100387
発生状況
この災害は、クレーンの点検修理を請負って出張作業中、作業者が天井クレーンにはさまれたものである。被災者Aは、各種クレーンの据付、年次点検等の点検および修理等を行っている会社に所属し、災害発生当日はX工場のクレーンの定期点検と修理を同僚2 名とともに行うために出張した。作業は、朝8 時頃から開始され、まず屋外のホイスト式片脚橋型クレーンおよび工場内の壁クレーン3 基の点検を終えて休憩後、同僚B、Cはそれぞれ無線操作式のホイスト式天井クレーン(いずれも定格荷重2.8t) を、Aは壁クレーンの(定格荷重0.5t) の点検を行うことになった。
Bは担当するクレーンの走行車輪の一部が欠けているのを発見し、ガーダーの上に乗ったままクレーンを走行させてチェックしていた。
クレーンが点検台の登り口の位置附近まで移動したとき、クレーンの動きが急に悪くなったので、反対側のサドルの方を見ると、Aが点検台への昇降ばしごから走行レール側に身を乗り出してクレーンのサドルと建屋の鉄骨柱との間に上半身はさまれていた。驚いたBがクレーンを移動させると、Aは下の壁クレーンを経て、地上まで約8m頭から墜落した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 作業計画を策定せずに作業を行ったこと
点検は一日に9 基というかなりの業務量であるため、同じ走行レール上での作業あるいは上下での同時作業が想定されていたのに作業計画を策定せず、また、全体を指揮する者も指名しないまま作業を行った。
2 クレーンを走行させるに際して周囲の状況を把握していなかったこと
被災者がはさまれたクレーンを運転していた同僚は、クレーンガーダーの反対側で操作業務を行っていたが、同時作業が予定されていたのに、他の同僚の作業等に配意していなかった。
3 点検作業のマニュアルが作成されていなかったこと
被災者等は、クレーンの点検作業等を日常業務としていたが、これらの作業に関するマニュアル等は作成されておらず、個々の作業者の判断で作業を進めていた。
4 壁クレーンの点検台に移動するためには、走行レール側に身を乗り出さなければならない構造となっていたこと
対策
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 作業計画を作成し、それに基づいて作業を実施すること。
限られた時間内でクレーンの点検等を実施する場合には、必要な人員、点検の順序、上下または同じ走行レールでの同時走行の禁止、衝突防止措置、監視人の配置等作業計画を策定し、作業を実施する必要がある。
2 作業指揮者を定めて、作業を行うこと
接近した場所で点検作業を並行や上下で行う場合には、作業者の注意のみでは安全対策としては不十分であるので、作業指揮者を定めて作業を行うことが必要である。
3 作業マニュアルを定めて、教育訓練を実施すること
点検作業については、依頼された先のクレーンの種類、取り付け状況等は、それぞれ異なるのでそれらに対応した安全対策が取れるような教育訓練も必要である。
4 点検の際には、事前にチェックして危険な個所があるような場合には、使用する設備等を検討し、必要に応じて、クレーンの所有者とも協議すること
厚生労働省