冷凍鯖をステンレス製の皿から抜きとる機械が故障して発生した騒音により作業者が急性難聴

業種 | 水産食料品製造業 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
事業場規模 | 30~99人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 食品加工用機械 | |||||
災害の種類(事故の型) | その他 | |||||
被害者数 |
|
|||||
発生要因(物) | 故障未修理 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | その他 |
No.100297
発生状況
この災害は、水産食品製造工場において、冷凍鯖を脱パン機でパンから抜き取る作業中に、脱パン機から発した強烈な騒音により、急性の騒音性難聴になったものである。X冷凍工場において、冷凍鯖をパン(ステンレス製の皿)から抜き取る作業を、脱パン機を用いて被災者10人で行った。
作業は午前9時から脱パンテーブル、パンを振動させる作業を中心に、パンをコンベヤに載せる、パンから冷凍鯖を取り出す、空パンを積む等の作業に分かれて行われた。
作業開始から約1時間経過した午前10時頃、脱パン機の脱パンテーブル支持脚部が破損して強烈な騒音を発したが、特に、被害者等は異常と考えていなかった。
午前11時頃になって予定量の冷凍鯖を抜き取る作業を終了したが、そのとき脱パンテーブルの近くにいた被災者A、B、C、D、Eの5名が耳の異常を訴えたので、工場所在地の耳鼻咽喉科の医院で受診し、他の5名も後日、受診し急性の騒音性難聴と診断され休業した。
被災者等はこの作業において耳栓、イヤーマフ等の保護具は使用していなかった。
原因
この災害の原因のとしては次のことが考えられる。1 脱パン機が故障して強烈な騒音を発したにもかかわらず作業を1時間も続けたこと。
2 脱パン機の一部が破損したため脱パンテーブルと振動モーター取り付けアングルが接触と打撃を繰り返し強烈な騒音を発したこと。
3 脱パン機の防振、防音の対策が不十分であったこと。
4 脱パン機、コンベヤ等の機械設備の定期点検体制が確立されておらず、また、始業時の点検も適切にされていなかったため、機械の損傷の前兆を発見できなかったこと。
5 パンの積み重ね作業で騒音があったこと。
6 管理体制が不備で異常の際の措置が不適切であったこと。
7 作業環境測定を実施していなかったこと。
8 騒音作業であるにもかかわらず防音保護具を着用していなっかたこと。
9 騒音防止対策や機械故障等異常時の措置等について教育がなされていなかったこと。
対策
この災害は、水産食品製造工場において、冷凍鯖を脱パン機でパンから抜き取る作業中に、脱パン機から発した強烈な騒音により急性の騒音性難聴になったものであるが、同種災害を防止するためには次のような対策の徹底が必要である。1 脱パン機は防音囲いを設ける等作業者に騒音の影響が少なくなる対策をする。
2 脱パン機の騒音が低減するように構造を改善すること。
3 騒音の作業環境測定を実施すること。
4 作業場所を騒音職場に指定し騒音職場と表示し、作業者には耳栓等防音保護具を着用させること。
5 点検制度を確立し、機械設備の定期点検、始業点検を実施すること。
6 定期健康診断において1,000、4,000Hzにおける選別聴力検査等を実施すること。
7 作業基準を整備し、周知を図ること。
8 騒音障害防止の労働衛生教育を実施すること。
9 安全衛生管理体制を整備すること。
10 作業場全体の騒音低減対策をすること。
11 パンの接触による騒音低減を検討すること。