天井クレーンの巻過防止装置が作動しなかったためにワイヤロープが切断してフックが落下
| 業種 | 造船業 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 事業場規模 | 16〜29人 | |||||
| 機械設備・有害物質の種類(起因物) | クレーン | |||||
| 災害の種類(事故の型) | 切れ、こすれ | |||||
| 被害者数 |
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| 発生要因(物) | 老朽、疲労、使用限界 | |||||
| 発生要因(人) | 無意識行動 | |||||
| 発生要因(管理) | 不意の危険に対する措置の不履行 | |||||
No.100292
発生状況
この災害は、造船所構内において、天井クレーンの作業が終了したので、クレーンを所定の位置まで移動後、フックを定位置まで巻上げていたところ、巻上げ用ワイヤロープが巻き過ぎにより切断したものである。X造船所において、一次請負者であるY社は、災害発生当日、つり上げ荷重20.4トン、揚程15.5mのクラブトロリ式天井クレーンを用いて、船体ブロックに掛ける架設足場の運搬や船体ブロック用鋼板の運搬等を行っていた。
災害発生当日クレーン作業が終了したので、Y社の運転者は工場の規定にしたがってクレーンを作業終了位置に移動させるため、玉掛けワイヤロープをフックから外し、その場でフックを約5m巻上げた後、クレーンを作業終了位置に向かって走行させた。次に、巻上げドラムへのワイヤロープの乱巻きを注意しながらワイヤロープを巻上げていたところ、大きな音がして巻上げ用ワイヤロ−プが切断し、フックが落下した。フックの落下とともに、運転者は無線操作装置の巻上げ起動スイチを切り、巻上げを停止させた。幸い、ワイヤロープの切断による死傷や休業等の災害は起こらなかった。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 巻過防止装置の配線の絶縁抵抗が低下しており、巻過防止装置のリミットスイッチが正常に作動しなかったこと。
2 巻過防止装置に接続している保護継電器の電気接点に摩耗および電熱による溶融箇所が発生し、巻過防止装置の回路が閉路状態となって、正常に作動しなかったこと。
3 クレーンフックの巻上げを、適当な高さで止めずに、巻過防止装置が作動する位置まで行ったこと。
対策
この災害は、造船所構内において、天井クレーンの作業が終了したので、フックを定位置まで巻上げていたところ、巻き過ぎにより巻き上げ用ワイヤロープが切断してフックが落下したものであるが、同種災害を防止するためには、次のような対策の徹底が必要である。1 経年クレーンに対する定期点検の詳細な実施と迅速な補修体制を確立すること。
2 電源回路に地絡が発生した場合、電源回
路が自動的に遮断される地絡過電流継電器を備えること。
3 電線や配線がクレーンガーダー等の構造部材や他の可動部分との接触の防止と配線の絶縁対策を実施すること。
4 定期点検時における電気回路の絶縁抵抗の測定の強化を図ること。
5 点検時期、実施者、記録等に関する点検
計画を作成し、計画に基づいて点検及び補修等が確実に行われる体制を確立すること。
6 クレーンの安全に関して、元請けと下請
け相互の円滑な情報伝達体制を確立すること。
厚生労働省