後退してきたドラグ・ショベルの履帯に巻き込まれる
| 業種 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事業 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 事業場規模 | 100〜299人 | |||||
| 機械設備・有害物質の種類(起因物) | 掘削用機械 | |||||
| 災害の種類(事故の型) | はさまれ、巻き込まれ | |||||
| 建設業のみ | 工事の種類 | 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事 | ||||
| 災害の種類 | パワーショベル等 | |||||
| 被害者数 |
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| 発生要因(物) | 区画、表示の欠陥 | |||||
| 発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
| 発生要因(管理) | 合図、確認なしに車を動かす | |||||
No.100230
発生状況
この災害は、被災者がドラグ・ショベルの後方で、作業状況を記録する写真撮影の準備を行っていたところ、後退してきたドラグ・ショベルの右側の履帯に巻き込まれたものである。災害発生当日、午前8時に朝礼を行った後作業が開始され、先に西側の埋め戻し作業から始められ、西側の埋め戻しを終えて、引き続き、北側側面の埋め戻し作業が始められた。
午後2時30分頃に北側側面の10層目の埋め戻し・転圧作業がほぼ終了したので、被災者は記録写真の撮影を行うこととした。作業員に記録写真用の黒板を持たせ、作業員と建屋の壁に書かれた埋め戻しが終了した層数を表示した赤い線が入るような撮影位置を、均し作業のために停止して待機していたドラグ・ショベルの後方に決め、ドラグ・ショベルを背にした場所で写真撮影の準備を始めた。
そこへ、土砂を搬送してきたダンプトラックが入ってきて、土砂を降ろそうとしたが、停止していたドラグ・ショベルが邪魔になったため、ドラグ・ショベルを1メートル程後進したところ、ドラグ・ショベルの右側の履帯に写真撮影の準備をしていた被災者の下半身を巻き込んでしまった。被災者は、直ちに病院に搬送されたが、病院に収容後死亡したものである。
原因
この災害の原因としては次のようなことが考えられる。1 ドラグ・ショベルの作業装置の稼動範囲と走行範囲内での接触による危険防止のための立入禁止措置がされていなかったこと
2 ドラグ・ショベルの運転者が、誘導者の合図、確認なしに車両を動かしたこと
3 ドラグ・ショベルの運転者が、ドラグ・ショベルの後方で被災者が写真撮影の準備をしていることを知らされていなかったこと
4 写真撮影の場所をドラグ・ショベルの後方に決めたこと
5 現場責任者が自ら車両系建設機械の誘導者であったが、誘導の業務をしないまま、写真撮影の仕事に専念してしまったこと
6 車両系建設機械を用いて行う作業についての作業計画が作成されていなかったため、作業の安全を確保するための検討が不十分であったこと
7 元請けと下請けの作業員が同一の場所で作業が行われる場合の作業間の調整が事前に十分行われていなかったこと
対策
この災害は、作業状況を記録する写真撮影の準備を行っていたところ、後退してきたドラグ・ショベルの履帯に巻き込まれたものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。1 車両系建設機械の稼動範囲への立ち入りを禁止し、立入禁止区域を看板、バリケード、ロープ等により明示すること。
2 作業の必要性から、車両系建設機械の作業装置の稼動範囲及び走行範囲内に労働者を立ち入らせて作業を行う場合には、車両系建設機械の運転について誘導者を置き、一定の合図を定め、誘導者はその合図により車両系建設機械の誘導を行うこと。
なお、 誘導者が不在となるときまたは他の作業に就くときには、代わりの誘導者を指名し、その者の誘導により車両系建設機械の運転を行うこと。
3 両系建設機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、使用する車両系建設機械の種類及び能力、車両系建設機械の運行経路、車両系建設機械による作業の方法、立入禁止区域の設定、誘導者の配置などについて現場の状況に適応する作業計画を作成し、その作業計画により作業が行われるように周知徹底すること。
4 請業者は、車両系建設機械を用いて行う作業場所で、複数の下請業者が混在して作業を行う場合には、作業計画の確認および業者間の連絡調整を十分に行うこと。
厚生労働省