トラッククレーンの点検作業を行っていたところ、そのクレーンが横転
業種 | その他の小売業 | |||||
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事業場規模 | 5〜15人 | |||||
機械設備・有害物質の種類(起因物) | 移動式クレーン | |||||
災害の種類(事故の型) | 墜落、転落 | |||||
被害者数 |
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発生要因(物) | 防護・安全装置が不完全 | |||||
発生要因(人) | 危険感覚 | |||||
発生要因(管理) | 安全装置をはずす、無効にする |
No.100151
発生状況
この災害は、A社の労働者YとA社の下請業者であるB社の労働者Zとの二人でトラッククレーンの点検作業を行っていたときに発生したものである。A社は、トラッククレーンなどの建設機械の販売、修理、検査、レンタルなどを扱っており、営業部門と工場部門とを有する企業である。
トラッククレーンの所有者であるC社は、性能検査受検のための点検整備をA社に依頼した。依頼を受けたA社は、検査機関による性能検査に合格した後、C社に引き渡す前日に、点検チェックシートにより最終チェックを行うこととした。
災害が発生した日、アウトリガーを中間両足張り出しの状態にしてトラッククレーンを工場の横に平行にして設置した。なお、工場内の敷地には、前の日から降り出した雪が積もっており、アウトリガーの敷板は積もった雪の上に置かれた状態にあった。
Zはトラッククレーンの運転を行い、Yは運転席の横に立って点検作業を行っていた。ジブの角度計などの点検を行うため、無負荷状態でジブを後方に向けて、傾斜角を50度にした。次いで、ジブの長さを33mに縮めて、後方から左旋回を始めた。ジブが真横方向にきたとき、トラッククレーンが横転し、運転席の横に立っていたYが地面に転落した。運転していたZは、運転席内で座席から浮き上がるようにして運転操作盤に激突した。
原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。1 トラッククレーンの設置に際して、アウトリガーを完全に張り出していなかったこと
2 過負荷防止装置を作動させずに運転操作を行ったこと
3 点検作業についての作業手順が定められていなかったこと
4 クレーンの点検作業に係る教育・訓練が十分でなかったこと
対策
この災害は、トラッククレーンの点検作業を行っていたとき、そのトラッククレーンが横転したため発生したものであるが、同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。1 トラッククレーンの点検作業は、ジブの長さおよび傾斜角に応じた安定度を考慮し、ウトリガーを完全に張り出した状態で行うこと。
2 トラッククレーンの運転は、必ず、過負荷防止装置を作動させた状態とすること。点検作業といえども、過負荷防止装置の作動を確認することが必要である。
3 作業の安全を確保するための作業標準を作成し、関係者に周知すること。
4 作業開始前に、作業標準に沿って作業方法を決定し、作業の安全を確認すること。
5 トラッククレーンを設置する場所は、積雪等悪天候による環境の変化を調査、確認し、必要に応じて作業場所の整備を行うこと。
6 作業の安全を確保するために必要な作業標準の励行、作業方法の決定などにつての安教育を実施すること。