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労働災害事例

エレベーターの搬器から墜落

エレベーターの搬器から墜落
業種 その他の金属製品製造業
事業場規模
機械設備・有害物質の種類(起因物) エレベータ、リフト
災害の種類(事故の型) 墜落、転落
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:−
不休者数:− 行方不明者数:−
発生要因(物)
発生要因(人)
発生要因(管理)

No.525

発生状況

この災害は、被災者Fが、2階に停止しているエレベーターから2台目の台車を取り出そうとして、反対側の出入口から7.4m下に墜落したものである。
 この事業場は、製缶業を営む、従業員15人の製造業である。
 災害発生当日、取引先のトラックが、できあがった製品を取りに来たため、2階にある製品を台車に載せ、エレベーターを使用して、屋外のトラックまで運搬を開始した。2階の製品は、主任のTが台車に載せ、エレベーターまで運んだ。屋外では、エレベーターから下りてきた台車に載った製品を、トラックの運転手Hがトラックに積み込んだ。Fは、2階でエレベーターで運ばれてきた空の台車を製品置き場まで運ぶ作業をしていた。
 災害発生の直前、空になった2台の台車(長さ197cm、幅96cm)を載せたエレベーターが2階のフロアーに停止した。
 Fは、まず、出入口に近い方に取っ手がついている台車を搬器(幅230cm、奥行き250cm、天井までの高さ2.5m)から下ろした。次に、出入口の反対方向に取っ手のある台車を下ろすため、搬器の奥に入った。台車は、相当大きいため取っ手から搬器の床先まではわずかしかなく、Fは誤って搬器の床先と昇降路の壁面の隙間27cmから7.4m下のコンクリートピットに落下し、死亡した。
 このエレベーターは、電動チェーンブロック(巻き上げ荷重2.0トン)に搬器と、それを支えるガイドレールを取り付けただけの1階と2階を往復する簡単なもので、自家製のものであった。昇降路塔の出入口は、1階は工場の外部から出し入れするために工場建屋の反対向き(南側)にあり、2階は材料や製品を工場内外に出し入れするため建屋側に接して(北側に)設けている。このため、搬器の出入口は南北両方にあり、その両方ともに扉は設けられていなかった。昇降機の1階の出入口はチェーンで囲っており、2階の出入口には戸を取り付けている。
 操作用のボタンは外部に取り付けてあり、作業者は搬器の内部から操作できないようになっている。
 なお、被災者は裸眼視力は0.1以下で、眼鏡をかけていたが、矯正視力でも右0.2、左0.4であった。

原因

[1] 操作用のボタンが搬器の内部にないため、人を載せないリフトだからと、エレベーターのすべての箇所に安全上の配慮がなされていなかった。しかし、1階と2階ではエレベーターの出入口が異なること、搬器の床面積が相当広く、日常的に搬器の内部に入って台車などの出し入れを行わせていたこと。
[2] 人を載せないリフトは、製造許可や各種検査制度、エレベーター構造規格が適用されないと、事業者が思い込んでいたこと。

対策

工場の中にあるエレベーターであっても、百貨店やホテルにあるエレベーターと同様に、本質的には安心して乗れるものでなければならない。同種災害を防止するためには、エレベーターは構造規格に適合したものを設置すべきである。また、積載荷重が1トン以上のものは、製造許可を受けたものを設置すべきことは言うまでもない。またエレベーターの設置に当たっては、作業の流れに応じた配置を考慮すべきである。