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労働災害事例

ホテルの電気室内で「ほこり」を払おうとして感電

ホテルの電気室内で「ほこり」を払おうとして感電
業種 ビルメンテナンス業
事業場規模 300〜999人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 電力設備
災害の種類(事故の型) 感電
被害者数
死亡者数:1人 休業者数:0人
不休者数:0人 行方不明者数:0人
発生要因(物) 充電部分の防護なし、不十分
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) 保護具を使用していない

No.1117

発生状況

この災害は、ホテルから清掃、ボイラー等各種設備の保守管理を請け負っているビルメンテナンス会社の電気主任技術者が、電気室内において断路器付近で感電死したものである。
 ホテルでは、3日間休業し、ボイラーの点検整備、客室の畳張り替え、浴室の整備工事等を行なっていた。
 被害者は、前日に引き続き、整備したボイラーの試運転の状況を確認するため、午前10時頃ホテルの地下の機械室に現れ、午前10時30分頃、金網で隔離されている電気室の入り口前で、同じ会社の者に「電気設備の埃を払う」と言って電気室内に入り、午前11時頃にドーンという音がして停電し、警報装置が鳴ったので、同じ機械室内にいた者が駆けつけ金網の扉を開けたところ、煙が充満しており、床面に人の足が見えたため、119番に通報した。
 被害者は、電気室の床上に計器用変成器(PCT)と電力用変圧器(トランス)の間に頭をおいて倒れており、付近には炭化した繊維片が散らばり、また、被害者の近くには繊維と思われる布が溶着した竹の棒が落ちていた。
 電気室の状況は、計器用変成器の磁器製二次側断路器の露出している3本の刃は開かれておらず、断路器の刃を固定している金具は溶断破損し、断路器を支持しているフレームパイプ等は黒く焼けた跡が残っていた。

原因

この災害は、ビルメンテナンス会社の電気の専門家である被害者が、常駐はしてはいないものの、自分が担当する区域のホテルの電気室において感電死したものであり、災害時の直接の目撃者はいないが、災害原因としては次のようなことが考えられる。
 災害が発生する30分程前に被害者は、ホテルに常駐していてボイラーの運転等を行なっている者に「電気設備の埃を払う」と言っているところから、他の者が立ち入らないよう隔離している電気室内に入り、自ら竹の棒の先に合成繊維の布端を取り付けた「はたき」を用いて各種電気機器に積もっていた埃を取り除いているうち、露出している高圧(6,000ボルト)の充電部に接近しすぎて感電したと考えられる。
 被害者は、第三種の電気主任技術者で電気の専門家なのに何故外から操作できる高圧回路遮断器を操作せずに電気室内に入ったか不可解であるが、ボイラー等は停止して整備していたため電気室の電源も遮断したものと錯覚したこと、普段はこのホテルの担当ではなく電気室内の実態に詳しくなかったこと、「はたき」に使用した竹が安全であると錯覚したこと等が考えられる。

対策

この災害は、ビルメンテナンス会社の電気の専門家であり、また、管理的立場にある者が、契約先のホテルの電気室において、契約内容にない「ほこり」の除去作業を単独で実施し、感電死したものであるが、同種災害の再発防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 作業計画の策定
2 停電作業の原則と措置
 (1) 開路した開閉器等の施錠、投入禁止の表示、監視人の配置等
(2) 残留電荷の確実な放電
(3) 検電器具による停電の確認
3 絶縁用保護具の着用等
 (1) 絶縁用保護具の着用と絶縁用防具の装着
(2) 活線作業用器具、活線作業用装置を用いた作業
4 充電部に接近した作業時の絶縁用防具の装着等
5 作業手順の徹底と見直し
6 電撃危険等に関する安全教育の実施
7 保守管理体制の明確化